映画の並木道

古今の映画や海外ドラマについて紹介しています。ネタバレは基本的になく、ネタバレするときは事前にその旨を記しています。

2010年代最高のサウンドトラック9選+α

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 2010年代もそろそろ終わりに近づいてきています。そろそろ、総まとめをしたい時期でもありますね。

 

 ということで、今回は2010年代の映画のサウンドトラックに注目して振り返っていきましょう。傑作サントラといえば、70年代なら『スター・ウォーズ』、80年代なら『バック・トゥ・ザ・フューチャー』、90年代なら『ジュラシック・パーク』、00年代なら『ハリー・ポッター』などなどが思い浮かびます。

 

 しかし、近年の名サントラと言われると、すぐには思いつかないかもしれません。確かに、80年代のようなノリが良くて、耳に残るサントラは減ってしまったような印象はあります。それでも、10年代にだって後世に残る名サントラは数多くあります。今回は、そんなサントラが最高な映画をピックアップ!

 

※今回はあくまでもサントラなので、主題歌などの歌曲は含みません。

 

 

 

1.『インセプション』(2010年)

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 夢の世界を舞台に、圧倒的な重厚感とドラマ性をもって描いた『インセプション』は、クリストファー・ノーランという才能とともに2010年代の記念碑的な作品でもあります。

 

 この作品に強力な説得力を与えている一因が、本作のサントラ。派手ではないんだけれども、非常に重厚感があります。今、サントラを聴いているだけで、その場面の感情が思い出されるほどで、まさに映画音楽の役割を見事に果たしている曲といえるでしょう。

 

 この音楽を担当したのは、現代映画音楽の巨匠ハンス・ジマー。この人抜きで、2010年代の映画音楽を語るわけにはいきません。本作や『ダークナイト』などのノーラン監督作品に加え、『パイレーツ・オブ・カリビアン』『シャーロック・ホームズ『マン・オブ・スティール』など、多くの作品の音楽を担当しています。

 

 ハンス・ジマーの名サントラとして、もう一つ挙げておきたいのがダンケルク。戦争映画なのですが、時計の針の音をイメージした非常に緊迫感のある音楽が、効果的に使われています。この音楽なしでは、『ダンケルク』という映画は到底成立し得ないでしょう。

 

2.『SHERLOCK/シャーロック』(2010年~)

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 2010年代のトレンドとして、ドラマのクオリティが一気に映画に引けを取らないレベルまで上がってきたことが挙げられます。ドラマの制作予算が格段に増え、それまで映画界で活躍していた監督や役者たちが続々とドラマの方にも参加し始めたことで、本当に面白くなっていっています。

 

 そんな海外ドラマの中でも、最初に映画レベルのクオリティを見せつけた一本が、イギリスの『SHERLOCK/シャーロック』。ストーリーの面白さに加え、出演陣の演技やスタイリッシュな映像など、語りつくせない魅力があります(つまり、自分も大好き)。その中の一つが音楽。ロンドンの街を駆け回り、謎に立ち向かっていくというような雰囲気が伝わって、良いですよね。

 

 この音楽を担当したのは、デヴィッド・アーノルドとマイケル・プライス。デヴィッド・アーノルドは、『トゥモロー・ネバー・ダイ』から慰めの報酬までの007シリーズの音楽も担当しています。007の音楽が素晴らしすぎるというのは、言わずもがな。これを語っているだけで、何本も記事が書けてしまいます。

 

3.『アベンジャーズ』(2012年)

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 2010年代の映画界で最も大きなムーブメントと言えるのが、アメコミ映画。特に、マーベル・スタジオの躍進には目覚ましいものがあります。そんなマーベル映画の人気を支えていた要素の一つに、サウンドトラックがあるのではないでしょうか。中でも『アベンジャーズ』のテーマは、2010年代を代表する映画音楽の一つ。壮大なスケール感を演出し、ヒーローが出てきたんだという場面を見事に盛り上げている名曲です。

 

 作曲したのは、アラン・シルヴェストリ。1970年代から活躍されている映画音楽界の大家の一人です。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』や『フォレスト・ガンプ/一期一会』などのロバート・ゼメキス作品に加え、『ナイト・ミュージアム』、『レディ・プレイヤー1』といった大作の音楽を多数手掛けています。

 

4.『パシフィック・リム』(2013年)

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 ギレルモ・デルトロが日本の怪獣映画へのあふれる愛を詰め込んだ、超大スケールのSF怪獣映画です。このテーマ曲は、とにかく威勢が良くて、強いものが出てくる感じがしますよね。映画を盛り上げるのに、最高の音楽でした。

 

 音楽を担当したのは、ラミン・ジャヴァディ。『アイアンマン』やドラマ『ウエストワールド』などの音楽も手掛けています。彼のサントラでもう一本挙げておきたいのが、ドラマゲーム・オブ・スローンズ。2010年代は、ファンタジー映画に関してはやや不作といった感じでしたが、ドラマの方では『ゲーム・オブ・スローンズ』という大きな収穫がありました。サントラも、その壮大な世界観を表現しており、『ロード・オブ・ザ・リング』などと並び、傑作の一つに数えられるでしょう。

 

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5.『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』(2014年)

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 『イミテーション・ゲーム』は、アラン・チューリングという実在の数学者が辿った数奇な人生を描いた物語になります。数奇な運命を辿った人物を主人公とする物語だと『ラスト・エンペラー』のサントラも非常に印象的でしたが、これもそれに近いような雰囲気があります。ただ、『ラスト・エンペラー』は中国のモチーフが取り込まれていたのに対して、『イミテーション・ゲーム』に取り込まれているのは戦争と計算機という要素。テーマ曲に関しては、計算機の歯車が回るようなリズムもあり、非常に映画とマッチしているなと感じました。

 

 この音楽を作ったのはアレクサンドル・デスプラ。他に、グランド・ブダペスト・ホテル犬ヶ島などのウェス・アンダーソン監督作品や、ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』『シェイプ・オブ・ウォーターなどの作品の音楽を担当しています。

 

 アレクサンドル・デスプラの音楽でもう一つ薦めたいのが、グランド・ブダペスト・ホテルウェス・アンダーソンの映画は、現代の監督の中ではかなり独自の世界観でもって映画を作っている方なのですが、その世界観に合わせてくる音楽が素晴らしい。特に、この映画では、民族音楽的な要素も取り入れながら、監督特有の可愛らしく独特な世界観を演出するあたりは実に見事。

 

6.『イット・フォローズ』(2015年)

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 個人的にホラー映画を観始めたのが、最近になってからなので、あんまりホラー映画には詳しくないです。ただ、それでも2010年代のホラー映画サントラから一本選ぶなら『イット・フォローズ』ではないでしょうか。

 

 ホラー映画は、サントラが大事。とりあえず大きな音をいきなり出せばびっくりするかもしれませんが、それだけで観客が満足するはずもありません。その点、『イット・フォローズ』のサントラは、緩急で聴かせていて上手い。異常に緊迫感を煽ったり、何かがやってきている雰囲気だったり、謎であったりといったものを音だけで伝えています。

 

 この音楽を作ったのは、電子音楽を得意とするディザスターピース。昨年公開された『アンダー・ザ・シルバー・レイク』の音楽も手掛けています。

 

7.『メッセージ』(2016年)

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 地球にやってきた異星人とのコンタクトを描いた本作。この映画の音楽は、かなり強烈。異星人や宇宙船が出す音があったりするんですが、それを完全に音楽にしてしまっています。しかも、我々が聴いたことがないような音を紡ぎだしているのです。私は、この映画の音楽に関しては、他のものとは完全に別次元にいってしまっていると思っています。それほどに我々の知らないものを感じさせる曲になっています。

 

 これを作ったのは、ヨハン・ヨハンソンという人。映画音楽専門というわけではなく、ロックバンドをやっていたりもします。映画では、他に博士と彼女のセオリー』や『ボーダーライン』などの音楽も作っています。

 

8.『レディ・バード』(2017年)

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 『レディ・バード』は、17歳の少女の高校卒業から大学入学までの日々を描いた青春映画です。シアーシャ・ローナンの演技やストーリー及び展開の上手さもあって、近年の傑作の一本だと自分は思っています。

 

 傑作だと思わせる映画は、サウンドトラックもやっぱり傑作です。『レディ・バード』のサントラには、それほどドラマチックな音楽は使われていませんが、そこが良いのです。だって、地に足が着いた日常の話だから。冒頭のちょっとテンポが良い曲や、主人公の出来事に合わせて静かに盛り上げていくような曲とかが素晴らしい。音楽も、主人公のレディ・バードを優しく見守っているような感じがします。

 

 この音楽を担当したのは、ジョン・オブライエン。最近だと、プーと大人になった僕の音楽もやっています。

 

映画『レディ・バード』~ひねくれ具合が良いね~ - 映画の並木道

 

9.『さよなら、退屈なレオニー』(2018年)

www.youtube.com(予告編しかなかった)

 2010年代の傑作サントラをこうやって選んでいるんですが、どうせなら今年劇場で観た作品も入れたいなと思います。『ジョーカー』のサントラもとても印象的なのですが、それは皆さん知っていると思うので、今回はちょっとマイナーな『さよなら、退屈なレオニー』を選ばせてもらいます(本国カナダでの公開は2018年ですが、日本公開は今年)。

 

 これは全体を通して素晴らしいというより、あるワンシーンが特に素晴らしいと思ったんです。それは、序盤でレオニーがすべてのことから逃げ出してくて、行先の分からないバスに乗るシーン。ここを、音楽で一気に盛り上げていきます。日常から突然ファンタジーの世界に至るようで、このシーンは映画の中でも特に印象的なシーンになっています。

 

 今年公開された映画からもう一本だけ挙げておきたいのが『HOT SUMMER NIGHTS/ホット・サマー・ナイツ』。テーマ曲が非常に印象的なんですよね。楽曲のチョイスも良くって、「90年代のアブない夏の思い出」を凝縮したエモーショナルな作品に仕上がっています。

 

映画『さよなら、退屈なレオニー』~目で魅せる~ - 映画の並木道

映画『HOT SUMMER NIGHTS/ホット・サマー・ナイツ』~アブない夏の思い出~ - 映画の並木道

 

10.まとめ

 2010年代のサントラは、総体として、それほど派手な曲は少ないのかなという印象もします。それよりは、映画の場面に向き合い、その場面の感情をより引き出すような曲が多いです。MTV全盛期だった80年代には、ともすれば音楽の方が目立つような映画もありましたが、近年はより映画の方にフォーカスした優れた映画音楽が生み出されているのかなと思います。