映画の並木道

古今の映画や海外ドラマについて紹介しています。ネタバレは基本的になく、ネタバレするときは事前にその旨を記しています。

『グラインドハウス』の楽しみ方~『デス・プルーフ』&『プラネット・テラー』~

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https://www.themoviedb.org/movie/285923-grindhouse/images/backdrops より

  クエンティン・タランティーノとロバート・ロドリゲスが好き放題やった映画。それが『デス・プルーフ』と『プラネット・テラー』。実は、この2本の映画は『グラインドハウス』という2本立て映画として制作されました。そういった特殊な事情もあるため、少し予備知識があるとより楽しめるのではないかと思います。もちろん、観賞後に知るのもまた良いでしょう。

 

 

 

『グラインドハウス』とは

  そもそもグラインドハウスとは、60~70年代アメリカに存在していた、B級映画などを2本立てや3本立てで上映する映画館のことです。映画『グラインドハウス』は、このグラインドハウスをオマージュするような形式の映画で、『プラネット・テラー』(ロバート・ロドリゲス監督)と『デス・プルーフ』(クエンティン・タランティーノ監督)という2本の長編映画と5本の偽映画予告から成っています。

 

 偽予告として作られたのは、『ナチ親衛隊の狼女』(ロブ・ゾンビ監督)、『Don’t/ドント』(エドガー・ライト監督)、『ホーボー・ウィズ・ショットガン』(ジェイソン・アイズナー監督)、『マチェーテ』(ロバート・ロドリゲス監督)、『感謝祭』(イーライ・ロス監督)の5本。

 

 ここで「あれ?」と気づいた人は鋭い。そう、『マチェーテ』と『ホーボー・ウィズ・ショットガン』についてはその後、実際に映画が作られているのです。『マチェーテ』に関しては、『マチェーテ・キルズ』なんていう続編まで作られています。

 

 偽予告と本予告が混じった動画がありました。順番は、0:00『グラインドハウス』本予告→1:41『ナチ親衛隊の狼女』→4:02『Don't/ドント』→5:29『感謝祭』→8:07『マチェーテ』→10:36『ホーボー・ウィズ・ショットガン』

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2作の共通点

 このように『プラネット・テラー』と『デス・プルーフ』は2本立てを想定して作っているため、独立した内容とはいえ共通点が多いです。まず目に付くのが、画の荒さ。60~70年代のB級映画へのオマージュなので、それに合わせてフィルム撮影をしたり、わざと映像が抜けていたりします。しかし、物語の時代は現代なので、普通に携帯を使っていたりしています。

 

 また、この2作には共通して登場する人物もいます。例えば、以下の人たち。

・『プラネット・テラー』:車のラジオで、『デス・プルーフ』前半に登場するラジオDJのジャングル・ジュリアを追悼する放送が流れる。

・『プラネット・テラー』:兵士たちが見ているテレビで、『デス・プルーフ』前半に登場する女優のパムが主演するピンク映画『女体拷問鬼看守パム』のCMが流れる。

・『デス・プルーフ』:スタントマン・マイクが運ばれる病院で、『プラネット・テラー』の女医ダコタ・ブロックやテキサス・レンジャーのアール・マクグロウが登場。

 

 登場人物に若い女性が多く、ほとんどがホットパンツに腹見せスタイルというのも共通しています。このように、2作には共通点もありますが、物語の運び方や映像の撮り方などには大きな違いが見られます。

 

『プラネット・テラー』感想

  内容は、謎のガスが流出して、人々がゾンビ化してしまったというお話。まず、気を付けてほしいのが、映像がかなりグロいということ。「閲覧注意」という注意書きが付きそうな映像が、ほぼ全編を通して続きます。人体にデカい膿が出来て、それが盛大につぶれ、肉体はぐちゃぐちゃに飛び散ります。ロメロのゾンビだって、ここまでじゃなかったぞ(笑)

 

 加えて、楽しいのはド迫力のアクション。車が燃えるときは、とにかく派手に吹き飛び、銃を撃てば、ゾンビの体は見事に飛んでいきます。片足に銃を装着したチェリーは、銃に触れずとも、なぜか脚を上げるだけで発砲できます。

 

 もうここまで突き抜けてやりたいことをやり放題している映画も中々ありません。だから、めちゃくちゃグロいんだけど、面白い。良い意味でバカすぎて楽しくなってきます。

 

 そして、変態兵士としてタランティーノが出演しています。この人もまた楽しそうに演じているし、その死にざまはヤバすぎる。ある意味、必見。

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『デス・プルーフ』感想

 こちらは、タランティーノがやりたいことやってる映画です。内容は、車で美女を殺すことで快感を得る殺人鬼スタントマン・マイクを描いたもの。とは言っても、映画のほとんどを占めるのは被害者側(?)のガールズ・トーク。とくに本筋と関係もなく、だらだらとした会話劇が続きます。いかにもタランティーノといったノリです。

 

 そして、あのラスト。いやー、痛快すぎて、もう笑うしかなかった。ここまで歯切れの良いラストもないでしょう。あの娘はどうなったの?とか細かいことは全部放り投げて、「ここがクライマックスだ!」というところでスパッと終わります。最高すぎる(笑)

 

 グラインドハウス的な趣向でロドリゲスとタランティーノを比べるならば、これは完全にタランティーノに軍配が上がります。もちろん、ロドリゲスのバカバカしさも非常に楽しいです。しかし、フィルムが燃えるタイミングが映画の展開にとって都合が良い感じになっていたりして、若干わざとらしさが見られます。その点、タランティーノは自然(に見える)。そういった技術面でもグラインドハウスらしさが感じられる作品になっています。

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まとめ

 ぜひ、『プラネット・テラー』と『デス・プルーフ』はセットで楽しんでほしいです。2作を通した伏線もいくつかあるので、何よりグラインドハウスの雰囲気を味わうには両方見るしかない!

 

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