Amazon Prime Videoに入っている謎の映画『Ink(インク)』(2009年)を観ました。いつも自分がよく使っている映画.comにさえ載っていなかったので、相当マイナーな映画なのでしょう。Amazonもよくこんな映画を入れているなあ。
1.あらすじ
ある日、少女がInkにより超現実の世界に連れ去られた。超現実界の語り部や案内者たちは、この少女を救うためにあらゆる手を尽くす。一方、少女のお父さんはそんなことは気に掛けずにいた。
2.解説(ネタバレ)
さっそくですが、ネタバレをして話をしていきたいと思います。何しろ、このあらすじでは何を言っているのかよくわからないと思うので。
『Ink』の世界には、私たちの肉体世界と精神世界(超現実世界)の二つが存在しています。精神世界の人は、肉体世界では死んでいる人たちの世界です。この精神世界には、人に良い夢を見させる語り部や、悪夢を見させる悪い人(目が光っている人たち)がいます。現状のInkはこのどちらでもなく、今回は悪い人たちの仲間になるために、少女を誘拐してきました。
しかし、ラストで真実が明らかになります。実は、このInkは少女の父親だったのです。父親は、娘が亡くなった苦しみに耐えきれず自殺をしていました。その後、精神世界でInkとなっていたのですが、同時に娘を失ったという辛すぎる過去を記憶からなくしていたのです。誘拐した少女が自分の娘だと気づいたInkは、必至に少女を守ります。
ここで注意したいのが、肉体世界と精神世界では時間軸が違うということです。肉体世界のシーンは、少女が死ぬ直前の出来事を描いています。つまり、本来ならば彼女はここで死ぬはずだったのですが、Inkのおかげで死なずに済んだのです。
まあ、完全にタイムパラドックスではあります。少女が死なないのなら、お父さんも自殺せずInkにもなりません。だから、娘を救えないし……。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(1985年)も似たようなパラドックスはありましたから、あまり気にしない方が賢明かもしれません。
3.自主制作
『Ink』の監督がジャマン・ウィナンスという人なのですが、制作会社もこの人の会社なので完全なる自主制作映画ということになるでしょう。以前に『π』(1998年)という映画の記事を書きましたが、こちらも実質自主制作映画です。
自主制作ということで、どうしても予算が少なく、普段よく観る映画と比べると映像などはあまりきれいではありません。撮影機材も不十分なのか、最初にInkと他の人たちが戦うときのシーンでは、カメラを動きすぎて目が回りそうになりました。普通の会話のシーンなのに、妙にカットが多かったりもします。
でも、その中でも肉体世界と精神世界の世界観の違いをちゃんと表すなどの工夫がされていました。また、キャラクターの造形が良い。目にバツ印の黒テープを貼った変人とか、なぜか顔の前にプロンプターを付けている悪役とか。チープではあるんだけど、良い感じで個性が出ていて、このキャラクターは好き。
4.アイデア(ネタバレ)
低予算映画で期待したいのは、独特の映像か面白いストーリー。アクションで魅せようと思っても、さすがにハリウッドにはかないませんから。要は、アイデア勝負なのです。
『Ink』にはこの二つが揃っていたので、比較的楽しく見られました。まず、独特の映像だが、これはさっき述べた通り。世界観ごとに色を全く変えたり、独特なキャラクターなどを見ることができました。
そして、ストーリーなのだが、これも良かった。最後のどんでん返しでもって、一気に感動する内容になるところが面白い。娘と遊ぶのさえ「苦手だから」と言って嫌がり、危篤だと言ってもろくに見舞いに来ない父親が、ここにきて娘のために戦おうというのですから。良いお話です。
5.まとめ
『Ink』という謎の映画を、自分もよくわからずに観始めたのですが、意外と面白かったです。ストーリーが結構ちゃんとしていたので、観てみても損はしないです。ただ、冒頭のアクションシーンで目が回り、サブリミナル効果(実際には効果はない)もふんだんに使われているので、観ていると疲れます。これも含めて低予算映画の楽しみだと思って、楽しむのも良いのではないでしょうか。
ところで、さっき自主制作だから低予算みたいなことを書きましたが、必ずしもすべてがそうではありません。例えば、『スター・ウォーズ』はあれほどの大作映画ですが、制作はすべてジョージ・ルーカスの会社が行っているので、自主制作映画ということになります。
評価高めの低予算映画↓