映画の並木道

古今の映画や海外ドラマについて紹介しています。ネタバレは基本的になく、ネタバレするときは事前にその旨を記しています。

映画『サイコ』~レガシーとして~

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 古典ホラー・サスペンスの金字塔をついに観ました。時代を考えればさすがだなと思う一方、現代的な視点で観るとちょっと物申したいところもありました。

 

 

1.あらすじ

 不動産会社に勤めるマリオン・クレーンは、彼氏と結婚して暮らすために、会社から4万ドルを持ち逃げした。夜になってモーテルに寄ったマリオンだったが、そこでノーマン・ベイツという青年と出会う。(1960年公開)

 

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↑この予告編めっちゃ良いですね

 

 監督は、”サスペンスの帝王”アルフレッド・ヒッチコックです。『裏窓』(1954年)、『めまい』(1958年)、『北北西に進路を取れ』(1959年)、『鳥』(1963年)など、サスペンスの傑作を数多く遺しています。現代映画に直結する手法をたくさん生み出しています。

 

2.世界一有名なサスペンス

 『サイコ』は、もう皆さんご存じの映画だと思います。特に、シャワールームでの殺害シーンは、映画史上最も有名なシーンと言っても過言ではないでしょう。

 

 私もこのシーンを楽しみにしていました。実際に見ると、全然刺してないじゃん!刺し方が出来の悪いロボットみたい。刺し傷も全く見せないんですね。規制でもあったのかな?

 

 でも、見せ方はやっぱり上手い。度々シャワーヘッドを映して、次に血が流れていくところを映すところとかは、死体を見せなくてもちゃんと殺害シーンを感じさせます。音楽や叫び声の使い方もものすごく上手くて、これは十分怖いです。

 

3.世界一有名な殺人犯(ネタバレ)

 これほど有名な作品なので、自分もノーマン・ベイツがシャワールームで女性を殺す話だというのは知っていました。もう知ってるからなあと思って、ストーリーにはあまり期待していなかったのですが、後半のどんでん返しは面白かった。ただのサイコパス映画じゃなくて、ちゃんと驚きが用意されているっていうのは良いですね。

 

 アンソニー・パーキンス演じるノーマン・ベイツが、狂気でしたね。応接室で母親や鳥のはく製の話をしているときに、あからさまではないけど、確実に何か狂気があるなと感じさせるのが見事。そして、ラストシーン。あの笑顔と声が、なんとも怖ろしい。このノーマン・ベイツのサイコっぷりは、忘れられないでしょう。

 

4.現代に『サイコ』を観る

 そうは言ってもです。さすがに50年以上前の映画ですから、現代の我々が見るとそんなでもないなあと思ってしまうところもあるわけです。例えば、殺害シーン。カメラワークは確かに上手いのですが、ナイフの扱いがあまりにも雑。今なら、結構このシーンはえげつない感じで撮るでしょう。

 

 そして、犯人の心理描写に関してももっと凄い映画はあります。それこそ『ジョーカー』は、狂気に至って悪に辿り着く男を描いた映画で、本当に怖い。あとは、スタンリー・キューブリックの諸作品で描かれる狂気性には、凄まじいものがあります。

 

 だから、現代の映画と同じ土俵に上げたら『サイコ』は一歩劣って見えてしまいます。でも、『サイコ』がなければそもそもその後の映画もなかったのでしょうから、同じ土俵で話すこと自体が不適切なのかもしれません。それほどに『サイコ』の、歴史的価値はゆるぎないものです。

 

 そんな『サイコ』ですが、今でも十分に通用するのが”音”。効果的に音が使われているのが印象的で、これは現代映画と比べても遜色ない。まずテーマ曲がずるい。これだけでホラー映画としては勝ち。そして、世界一有名な叫び声。ナイフの刺さる音も、本当にザクッと刺している感じで痛々しい。お母さんの声も最後まで耳に残りますよね。音の使い方は、べらぼうに上手いです。

 

5.まとめ

 『サイコ』は、それはもうさすがです。ヒッチコックの映像や、特に音は本当に上手い。ヒッチコックがなぜこれほど偉大だと称えられているのかが、よくわかります。そして、後半に待ち受ける予想外の展開も面白い。確かに、映画史における傑作です。

 

 現代映画と比べると、やや弱い印象も残りますが、それでも偉大ではあります。また、これほど”音”をこれほど上手に使った映画もなかなかないので、ぜひ今後ご覧になる場合は音にも注目してみると良いと思います。

 

 ちなみに、『サイコ』には続編の『サイコ2』(1983年)、『サイコ3/怨霊の囁き』(1986年)、『サイコ4』(1990年)という続編もあるそうです(『アメリカン・サイコ』(2000年)は関係ありません)。また、『ベイツ・モーテル』(2013~2017年)というノーマン・ベイツの少年時代を描いたテレビドラマもあります。このドラマに関しては、かなり評判も良いので、興味があったらぜひ。

 

古典の名作をもう一本↓

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