映画の並木道

古今の映画や海外ドラマについて紹介しています。ネタバレは基本的になく、ネタバレするときは事前にその旨を記しています。

映画『レジェンド 狂気の美学』~トム・ハーディ×2~

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※画像はイメージです

 トム・ハーディが良いですねえ。トムが一人二役を演じているなんて、美味しすぎるではありませんか。

 

 

1.あらすじ

 ロンドンに実在したギャングのレジー・クレイとロン・クレイの双子を描いた実話。1960年代当時、クレイ兄弟はロンドンを完全に牛耳っていた。だが、レジーはフランシスに出会ったことで、足を洗うことを決意する。(2015年公開)

 

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2.トム・ハーディ

 主人公のレジー&ロン・クレイを演じるのは、ともにトム・ハーディ。『インセプション』(2010年)、『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(2015年)、『ヴェノム』(2018年)などに出演して、存在感を発揮しています。

 

 今回のトム・ハーディは、最初からとにかくハマっています。レジーの登場シーンから、オーラがあって非常に良い。バリバリにカッコいいというのではなく、身についている感じですね。実際のクレイ兄弟のことは全然知りませんが、トムの演じるクレイにはリアリティがありました。

 

 レジーとロンの演じ分けがきちんとできているのも、非常に良い。話し方や仕草が違うので、観ていてこの二人が混ざることはまったくありませんでした。特に、ロンの方は最初から少し狂ったところがあるのですが、そこが見事。レジーも後々狂っていくのですが、ロンとの狂い方の違いというものがちゃんと見られたのが良かった。

 

3.脇を固めるキャスト

 レジーのフィアンセであるフランシスを演じるのがエミリー・ブラウニング。代表作は、『エンジェル・ウォーズ』(2011年)になってしまうのでしょうか。この映画での彼女の演技は悪くないのですが、なぜか彼女をヲタクたちの餌食になりそうなコスプレをさせ、訳の分からないストーリーを作り上げてしまった制作陣は罪深い。

 

 ロンの恋人のテディ役(ロンはゲイなので恋人は男)で、近年大活躍のタロン・エガートン。『キングスマン』(2014年)で華々しくハリウッドデビューを飾ったのち、『フッド:ザ・ビギニング』(2018年)でロビン・フッド、『ロケットマン』(2019年)でエルトン・ジョンを演じるなど、主演作が相次いで公開されています。この作品では、登場シーンはさほど多くないものの、しっかりとその存在感を発揮しています。

 

4.ギャングスターも楽じゃない(ネタバレ)

 こういった裏の世界の物語は、そもそもそんな悪い人たちのことなど知るわけがないと言っていると、さっぱり話が入ってこないので、いったんそういった態度は置いておくべきでしょう。『ゴッドファーザー』にしても『アウトレイジ』にしてもそうです。ギャングやマフィアが悪であるという認識はもちろん正しいのですが、映画はそこにいる人々の物語を描いています。善悪ということにいちいち囚われていると、ちょっと面倒です。

 

 そうして観ると、この映画は一人の男が兄弟や愛する女性に翻弄される物語です。レジーは頭もよく、冷静に判断することが裏世界を渡っていくためには必要だと心得ています。一方、ロンはそのことを承知していながらも、ときには暴れてやらなければ気が済みません。あまり上手くいかなそうな二人ですが、双子の絆は固く、なんだかんだ上手くやっていきます。

 

 しかし、レジーがフランシスと出会ったことから状況は変化し始めます。フランシスは、レジーに足を洗ってほしいと望んでいます。その思いに応えて、一度は足を洗ったレジーでしたが、すぐに裏の世界に戻ってしまいます。

 

 フランシスが自殺したことで、レジーはついに”理性”の人ではなく”感性”の人になってしまいます。それまでは、兄弟で理性と感性のバランスがある程度保たれていたのですが、ここでそのバランスは崩れます。そして、クレイ兄弟は破滅を迎えることになります。

 

 ちなみに、gangとは暴力組織のことで、gangsterはその一員という意味です。クレイ兄弟は何度か「We are gangsters」みたいなことを言っていますが、これは字義通りに採れば、あくまでも自分たちがギャングであることを言っているだけです(スターという意味はない)。映画的な展開を含めれば、「俺たちはギャングの頂点にいるんだぜ」という意味合いがあるのかもしれませんが。

 

5.まとめ

 トム・ハーディの演技を満喫できる『レジェンド 狂気の美学』でした。これまでも『オースティン・パワーズ』、『バック・トゥ・ザ・フューチャーPart2』など、一人で何役か演じている映画は観たことがありますが、これほど見事に演じ分けられているものは観たことがないです。トム・ハーディの演技だけでも、十分観る価値あり。

 

 加えて、兄弟の切りたくても切れない絆や、どうしても恋人を幸せにすることができない男の模様が描かれています。自分たちにはどうしても知ることのできない世界のトップに立った彼らの顛末をとくとご覧あれ。

 

そう簡単にはギャングになれないなとも思う↓

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