今回は、批評家が大好きな映画『第三の男』(1949年)です。テーマ曲は誰もが聞いたことがあるはず。
1.あらすじ
第二次世界大戦終戦直後、友人のハリー・ライムを訪ねにウィーンに来た作家のホリー・マーチンス。しかし、ハリーは事故で亡くなったと知らされる。このことに、疑問を抱いたホリーは、独自に真相を調査し始める。
この作品は、カンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞しました。監督のキャロル・リードは、他に『オリバー!』(1968年)が有名。出演者の一人オーソン・ウェルズは、『市民ケーン』(1941年)の監督・主演で有名です。
2.サスペンス映画のすべて
この映画には、サスペンス映画のすべてが詰め込まれている。サスペンスに限らず、映画がお手本とすべきところが多いのは確かだろう。
まずは、ストーリー。これは、十分に面白い。「第三の男」の正体は、たぶんどこかの推理小説にあるのだろうが、それでも上手い。かえって、このぐらいのひねりの方がすぐに理解できて、観客もついていきやすい。そして、言葉も通じない国でハリーの事件に振り回されるホリーの顛末も、見ていて面白い。
次に、映像。白黒なのは仕方ないですが、映像自体は今見てもそれほど不自然ではない。カットもあまり間延びしていない(基本的に現代の映画の方がカットは短いので、今見ると昔の映画は間延びしているように見えがち)し、風景も適度に雰囲気を醸し出している。終盤の追跡劇も、しっかり魅せてくれます。
そして、どうしても触れなければいけないのが、音楽。日本では、エビスビールの音楽として、誰もが知っているテーマ曲です。でも、皆さんもメロディを思い浮かべていただければわかると思いますが、あまりサスペンス映画に使いそうな音楽ではないですよね。ほのぼのとした雰囲気があります。哀愁っていう感じで、これもアリなんでしょうか。
3.映画のすべて
この映画は、批評家の間ではものすごく評価が高いです。オールタイムベスト企画をやると、必ず上位に入ってきます。最近だと、キネマ旬報が2009年に行った「映画人が選ぶオールタイムベスト100・外国映画編」では、第4位でした(1999年は1位)。
でも、本当に現代の人々が見て最も素晴らしい映画がこれなのかと言ったら、そんなわけはないはずなんです。映画は、常に進化し続けているので、今の映画の方が現代人にとっては面白いに決まっています。昔の映画の方が面白いのだったら、今でも同じように作ればいいだけの話ですから。
この映画がつまらないと言っているわけではないです。今でも十分楽しめる内容だと思います。ただ、これが歴代1位というのは過大評価ではないかと。これよりも面白いサスペンス映画は、他にもあるのではないでしょうか。
おそらく、この映画がそれほどまでに、高く評価されがちな理由は、その歴史的価値からではないでしょうか。この映画は当時としては画期的な映画だったのかもしれません(映画史にそこまで詳しくない私には、そこまではわかりませんが)。そして、この映画で使われた技法などが、現代でも使われているのは素晴らしいことです。その歴史的価値は十分にあるでしょう。
ただ、この映画の技法を使った映画が他にあるのならば、そちらの方が面白いということになっても良いのではないでしょうか。この映画の欠点(犯人の動機が即物的すぎるなど)を改良したうえで、もっと面白い映画だってあるではないか。そう思ってしまうのです。批評家の皆さんよ、いつまでも古い映画ばかりを評価していたら、映画界の発展はありませんよ。
4.映画の並木道
実は、この映画はこのブログと大きな関連があるんです。それは、ラストシーンの並木道。このシーンは、結構有名らしいですね。このブログのタイトル「映画の並木道」もここから付けました。というのは、後付けの理由ですが。なんとなく、様になりますね。
本当の理由は、この世の中には様々な映画があって、その象徴が並木道の木々。道は、映画界の今後の発展を指しています。そんな感じで、このブログでも様々な映画を見て、今後の映画界の発展を見守っていけたら良いなと思っています。
5.まとめ
『第三の男』は、現代でも十分に面白いサスペンスです。ストーリーはわかりやすくて面白く、映像も良いです。白黒ですが、デジタルリマスターされたものもあるので、あまり気にはなりませんでした。見てみても、損はないです。
ただ、批評家が評価しているから、という理由ならわざわざ見なくても大丈夫です。世の中には、もっと進化した映画もたくさんあります。普段の映画を見る感じで、気楽に見てもらえば良いと思います。特に、適度な重すぎないサスペンス映画を見たい方におすすめします。
あ、それから、この映画を見ると無性にビールが飲みたくなると思います。缶ビールのご用意を。
現代のサスペンスと言えば、↓
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