映画の並木道

古今の映画や海外ドラマについて紹介しています。ネタバレは基本的になく、ネタバレするときは事前にその旨を記しています。

映画『ファーゴ』~Oh, yeah~

Fargo logo

 以前から気になっていた『ファーゴ』(1996年)をやっと見ました。有名ですよね。サスペンスとも言われますが、思っていたよりも、かなりゆるっとした展開でした。

 

 

1.あらすじ

 お金に困ったカーディーラーのジェリーは、2人組の男に頼んで妻を偽装誘拐して、妻の父からお金を奪おうとする。しかし、2人組はひょんな展開で人を殺してしまい、事件はどんどん大事になっていく。

 

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 監督・脚本はコーエン兄弟。『赤ちゃん泥棒』(1987年)、『ノーカントリー』(2006年)、『トゥルー・グリッド』(2010年)などが代表作。犯罪をテーマにしたものが多いですが、バイオレンス描写がそこまで多いわけではありません(タランティーノと比べれば、ですが)。ブラックユーモアを得意としていて、これが好きな人は好きって感じ。

 

2.印象的なキャラ

 本作に登場するキャラは、皆かなり濃い。まずは、偽装誘拐を承った2人組のカールとゲア。カールはとにかく、変な顔と言われ続ける。「どんな顔?」「とにかく変な顔だった」だから、どんな風に変なんだよ!w カールはかまってちゃんなので、ゲアと話をしたい。でも、話してくれない。

 

 ゲアの方は無口だけど、とりあえずやばい。すぐに人を殺してしまう。後先考えずに。依頼されたのは殺人ではなく、誘拐であるにも関わらず、殺人も犯して余計な罪を重ねてしまう。

 

 偽装誘拐を依頼するジェリーがまた情けない。義理のお父さんに全く顔が上がらない。自分が疑われてはいないのに、警官からの質問におろおろする。顔もずっと困った顔をしている。

 

 事件を担当するのが、妊娠中の警官マージ。この人は殺人事件を捜査しているのに、緊張感がない。尋問などをしても、興味があるのかないのかよく分からないOh, yeahという返事を返すばかり。夫のノームは、さらに無関心そうにOh, yeahと言うのだから、本作はOh, yeahだらけになってしまう。それでも、終盤になると、そんなマージがかっこ良く見えてくるというのが、上手い。

 

3.あれよあれよの展開

 偽装誘拐に殺人という中々ショッキングな出来事を扱っているにも関わらず、本作は全体的にゆるゆると進んでいきます。しかし、事態はなぜかどんどん大きくなっていくのです。普通なら、サスペンスや謎要素で盛り上げそうなものを、そんなことはせず、どんどん話は進んでいってしまいます。これが、本作を他の作品と決定的に違うものにしているのでしょう。

 

 個人的には、日常生活がひょんなことから、恐ろしくも大事になることがあるということを感じました。ジェリーは日常から一歩踏み外してしまったために、予期せぬ大きなトラブルに巻き込まてしまいます。一方のマージは、そんな事件を捜査しながらも、比較的平穏な日常を送っています。そんな対比が、とても印象的。

 

4.嘘だらけ

 『ファーゴ』は、実は嘘だらけの映画です。まず、一番大きな嘘は実話ではないということ。映画の冒頭で「これは実話である」と言っているのですが、実話ではありません。そのことがエンドロールで、ちゃんと書いてあります。ですが、エンドロールをじっくり見ている人もほとんどいないので、実話だと思っている人も多いです。実話を基にしているわけでもなく、完全にフィクションなんです。

 

 もう一つが題名の「ファーゴ」。アメリカのノースダコタ州にはファーゴという地名があり、題名からするにここで事件がおきたのではないかと思わせます。しかし、作中でファーゴが登場するのは冒頭のシーンのみで、一連の事件はミネソタ州ミネアポリスで起きています。つまり、物語においてファーゴはそれほど重要な場所ではないのです。

 

 これらは、たぶんコーエン兄弟の冗談なのでしょう。本作はブラックユーモアがふんだんに散りばめられた作品であり、それを観客にまで広げるための演出が上の2点なのかなと思います。ここでイライラしていたら、コーエン兄弟の作品は楽しめないということなのでしょう。

 

5.まとめ

 『ファーゴ』のジャンルが何かと問われると難しい。緊迫感がないため、サスペンス要素は薄いし、謎解き要素もない。コメディ映画と言われることも多いが、私にはどこが笑いどころなのかよく分からなかった。とりあえず、こっちもOh,yeahって気分になりました。緊迫感のある映画を観る気分でもないというときは、軽く観てみてはいかがでしょうか。

 

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