これは、男女が偏見とプライドを越えて、互いに惹かれあっていく純愛物語です。原作は、ジェーン・オースティンが著し、いまだに人気がある作品です。この映画は、そんな不朽の名作を映画化したものです……。
……ただし、ゾンビが出てきます。
1.あらすじ
18世紀のイギリスの片田舎に暮らすベネット家の5人姉妹は、裕福な男性と結婚することを夢見ていた。ある日、隣の家に資産家のビングリーが引っ越してきて、5人姉妹はそこで開かれた舞踏会に参加することに。そこで、次女のエリザベスは人を見下したような態度をとるダーシーという青年と出会う。初めこそエリザベスとダーシーは反発し合っていたが、徐々に相手のことが気になるようになる。一方で、ゾンビは確実に増殖していた。(2016年公開)
2.2倍楽しめる
パロディ映画といって、バカにするなかれ。このストーリーは、ゾンビを除けば、ほとんど『高慢と偏見』そのままです。つまり、名作『高慢と偏見』の魅力は、あますところなく楽しむことができます。
それに加えて、ゾンビアクションの要素が入っています。ゾンビ自体はそれほど大したことはありませんが、ゾンビと戦う女性たちはかっこいい。襲い掛かるゾンビたちをバッサバッサと倒していきます。
筆頭は、主人公のエリザベス。演じるのは、リリー・ジェームズ。『シンデレラ』(2015年)の主演で大ヒットし、『ベイビー・ドライバー』(2017年)ではヒロインを務めています。可愛いし、こういった歴史ものによく合いますね(ドラマ『ダウントン・アビー』にも出ていた)。
ちなみに、彼女はこの映画で牧師役のマット・スミスと交際しています。この関係はまあまあ長くて、同棲もしており、今のところ破局したという話もないので、近いうちにゴールインする可能性は高そうです。
3.ブリティッシュユーモア
元々の『高慢と偏見』自体もそれほどシリアスな作品ではなく、ユーモアも盛り込まれた楽しい作品です。『高慢と偏見とゾンビ』では、そのユーモアをさらに強化しています。例えば、マット・スミス演じる牧師。ペラペラと訳の分からないことをしゃべって、姉妹を困惑させるあたりはブリティッシュユーモアが効いています。マット・スミスという人は、ドラマ『ドクター・フー』の主役のコミカルなドクター役でヒットしたので、こういった役はお手の物のようです。
そもそも、近世ヨーロッパの時代にゾンビがいるというだけでも、もう面白いです。ゾンビ映画は、現代を舞台にしているものがほとんどなので、皆がドレスを着ているところにゾンビが登場するというのはシュール。剣でゾンビを倒すというのも、実は新しい。普通は銃を使ったり、何かで殴ったりしてゾンビを倒すものです。剣でゾンビを倒すというだけで、普通のゾンビ映画よりもかっこよさが増します。
4.覚え書
この映画には聖ラザロ教会というところが出てきます。ここはゾンビの巣窟なのですが、ちょっと名前が気になりました。ラザロといえば、キリスト教の聖者で、復活したことで有名です。つまり、彼は一度死んでいるのですが、そこから生き返ったことがあります。これってゾンビですよね?
海外の映画だと、こういう風にさりげなくキリスト教が引用されていることも多いので、多少は知識があると良いかもしれません。たぶん、海外に行った際にも、教養として役立つと思います(知らないけど)。ちなみに、実際の聖ラザロ教会は、キプロスやマカオにあり、観光地にもなっているそうです。
あと、エリザベスがハエを指で捕まえるシーンがありましたが、私はここで『ベスト・キッド』(1984年)を思い出してしまいました。ジャッキー・チェンの方じゃなくて、古い方です。この映画で、ミヤギが箸でハエを捕まえるシーンが、個人的にはツボです。
5.まとめ
『高慢と偏見とゾンビ』は名前こそふざけていますが、中身はA級作品で、『高慢と偏見』の内容もほぼそのまま含まれています。『高慢と偏見』を知っている人は、そのパロディとしてもちろん楽しめると思います。それだけでなく、『高慢と偏見』を知らない人でも、この映画を見れば、その内容を十分知ることができて楽しめます。
加えて、ゾンビというスパイスにより、美しい女性陣が華麗に戦うところが見られるので、これがまた楽しい。ゾンビ映画として見ると、やや見劣りする可能性はありますが、恋愛映画あるいはアクション映画として見れば満足できると思います。アクション+ロマンス+コメディって、面白くないわけがないですよね?
インド製ゾンビコメディ↓