パンクだ! この映画はパンクである! 設定がぶっ飛んでるし、映像もぶっ飛んでいるが、これはパンクだ!
基本データ
・原題:How to Talk to Girls at Parties
・公開日:2018年5月11日(イギリス)、2017年12月1日(日本)
・制作国:イギリス、アメリカ
・原作:ニール・ゲイマンの同名小説
・監督:ジョン・キャメロン・ミッチェル
・出演:アレックス・シャープ、エル・ファニング(『マレフィセント』オーロラ役)、ニコール・キッドマン、トム・ブルック(ドラマ『プリ―チャー』)
・あらすじ:
1977年のロンドンの町クロイドンに、パンク好きの高校生エンと友人のヴィク、ジョンがいた。ある日、彼らは明らかに異質な集団のパーティに参加し、そこでエンはザンという少女に出会う。その後、エンは「パンクを見せて」と言うザンと48時間をともに過ごすことになる。
・予告編:
エイリアン生態解説
日本版のポスター(予告編のサムネと同じ)だと、SF感が全くないのですが、『パーティで女の子に話しかけるには』は完全にSFです。ただ、人間側がいまいち彼らを宇宙人だと認識していないために、本当はただのカルト集団なのじゃないかという気もしてしまいます。でも、彼らは宇宙人です。
彼らは、6つの惑星がある星系の出身だそうです。そして、6つのコロニーと呼ばれる集団に分かれて生活しています。全体で統一された厳しいルールとともに、コロニーごとにスローガンがあります。ルールの方はレベル別になっていて、相手に触ったりするのもルール違反になるのだとか。でも、あからさまに重いルール違反でなければ、あまり処分を受けることもなさそう。
コロニーはペアレント・ティーチャー(PT)一人と、その子供たちで構成されています。そして、PTは自分の子供たちを食べる風習があります。今回は、彼らが地球を去る前に子供たちを食べる予定になっています。
ザンは、第4コロニーの一員。第4コロニーは、「個性の尊重」をスローガンに掲げていまし。しかし、ザンは、実際はルールに縛られて何も出来ていない状況にうんざりし、特別に許可を得てエンとともに行動することになりました。しかし、彼女は48時間後にはPTに食べられる運命です。彼女自身は特にそのことを心配している様子はありませんが。
パンクしようぜ
『パーティで女の子に話しかけるには』を観ていると、「パンクって何だ?」ということを考えずにはいられません。音楽としては、セックス・ピストルズやラモーンズに代表される、当時のロックに対する反抗として生まれた実験的な音楽のジャンルと説明されます。より一般には、現状の文化や風潮に対する「反抗」の文化がパンクと言われています。
この映画では、エル・ファニング演じるザンが圧倒的にパンクしています。自分のコロニーから飛び出し、人間世界に飛び出していくところがまずパンク。そして、怖いもの知らずで、色んなことをエンとともにやってみます。匂いを嗅ぎ合ったり、キスしたり、顔をなめたり。ここでは、監督のフェティッシュな趣味を見ることもできます(笑)パンクだなぁ。
映画の作り自体も、パンクしています。特にザンとエンがステージで歌うところから、急にMVみたいに宇宙空間(?)の映像が流れてくるところは、ぶっ飛んでいる。宇宙人も、ただラバースーツを着ておかしなことを言っているだけにも見え、極めて特殊な造形がされています。
ベストシーン
『パーティで女の子に話しかけるには』のベストシーンは、ザンがステージで歌い始めるところに決定! ザンが歌えるかどうかも全くわからず、観ている方も不安しかないままで、彼女はステージに上がってきます。最初は、あまり面白くもないことを歌い始めますが、あるところでスイッチが入ります。そして、「I'm not a tourist」と叫んでからがもう最高! エンが入ってきて、一緒に歌うところも最高! まさにパンクそのものだったし、この映画のすべてを表していたように感じられました。
ちなみに、この声はちゃんと本人たちのもの。エル・ファニングは、『ティーンスピリット』でも歌っていますからね。歌える人なんですよ。ただ、彼女の凄いところは、ただ歌うだけじゃなくて、その場面での心情で歌えるところ。だから、必ずしも歌手のように上手い歌声を聞かせてくれるとは限りませんが、それでこそ女優。これから、もっともっと活躍していくことでしょう。
まとめ
『パーティで女の子に話しかけるには』は、かなりクセが強めです。パッケージだけでは、SFものという要素が感じられないので、なおさらそう感じやすいかもしれません。そのクセにハマるかどうかで、好き嫌いが分かれる作品になっています。
自分は、とても面白く観させてもらいました。あの宇宙人は好きですよ。変なラバースーツかもしれませんが、それはそれでセンスが感じられます。パンク側の衣装や歌も良かったじゃないですか。ザンの奇行の数々も、なんとも愛おしい。
それだけではありません。このストーリーも好き。アイデンティティや親子関係といったテーマを、宇宙人という外部の存在を置くことで改めて浮き彫りにしています。そして、そこから導き出されるザンの決断や、エンの成長には感動もさせられました。少々意味不明なところもありますが、映画というのは明快であれば良いとも限りません。このぐらい観客に思考を求める映画も、私は好きです。
ということで、私は『パーティで女の子に話しかけるには』を全面支持します。最高でした。エル・ファニングは可愛かったけど、それだけではありません。ストーリー、美術、音楽といったいくつもの面で、見所のある映画です。タイトルはいまいちかもしれないけど、おすすめ。
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