映画の並木道

古今の映画や海外ドラマについて紹介しています。ネタバレは基本的になく、ネタバレするときは事前にその旨を記しています。

バーフバリVS物理~黄金像の巻~

 今回は禁断の企画に手を出してみようと思います。それは、「バーフバリを科学的に検証してみる」。バーフバリに科学法則が通じない、と人はよく言いますがそんなわけはありません。彼もこの宇宙にいるのならば、科学の法に従っているはず。ということで、バーフバリを科学的に検証してみましょう。

 

 今回検証するのは、『バーフバリ 伝説誕生』のワンシーン。この映画の中で、バーフバリはたった一人で、倒れかけた巨大な黄金像を止めます。たぶん、ここが二作を通じて最もバーフバリが怪力を発揮している場面ではないでしょうか。このシーンを徹底的に調べていきましょう。

 

この予告編では、00:16~00:24の場面になります。

youtu.be

 

 

1.巨大な黄金像

 まずは、このシーンでどのようなことが起こったのかきちんと把握しなければいけません。そこで、そのシーンを何度も再生しながら、画面に定規を当てて測定しました。結果、黄金像の大きさはおおよそ高さ25mとなりました。自由の女神の足から頭までの高さが33.86mなので、これよりは少し小さいぐらいですね。

 

 自由の女神の総重量が225トンということですが、これは台座も含めた質量になります。ということは、黄金像のざっくり150トンぐらいでしょうか。これはあまりにも雑な値ではないかと思われるかもしれませんが、とりあえずはバーフバリの力を概算したいだけなので、大丈夫です。この後に出てくる式を見ても、このくらいは許容範囲でまとめられそうです。

 

 バーフバリが具体的に何をしたのか具体的に見ていくと、どうやら彼は倒れてきた黄金像をピタッと止めることができたようです。画面から見るに、倒れだしたときの黄金像の地面に対する角度は約45度、バーフバリが止めたときの角度は約30度になりそうです。(この数字がちょっと都合が良すぎるように思う人もいるかもしれませんが、あくまでも概算であり、後述の数式を見るとこの誤差は黄金像の重さよりも小さなものになります)

 

2.簡略化して考えよう

 ここまで文章で説明してきましたが、これを図で表すと下のようになります。下図はバーフバリが黄金像を止めた瞬間のものです。

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 なんだこれは。図が下手すぎるではないか、と思った方。大変申し訳ありません。なにぶんこういったことに不慣れなで、まともなソフトもないのでこんな感じになってしまいました。ですが、今後の計算には支障がないので、御勘弁を。

 

 まったく黄金像に見えないというのは別に良いのです。できるだけ扱う事象は単純にしないとこの後が大変ですし、バーフバリの力を求めるだけならこのモデルでも大丈夫です。

 

 問題のシーンをいくら見てもバーフバリがどの綱を引っ張っていたのかよくわからなかったのですが、おそらく像の胸のあたりに巻き付いている綱の一本を引っ張っていたでしょう。胸の高さは約18mでした。綱は定滑車を用いて方向が変えられていて、綱は地面に対して平行に黄金像と結び付けられていました。

 

 以下、物理のお話が続きます。結論だけ知りたい方は第4章へ進んでもらっても構いません。

 

3.位置エネルギーと仕事の関係

 ここまでわかればあとは簡単です。バーフバリの力を求めるには、黄金像の位置エネルギーの変化とバーフバリがした仕事が等しいことを利用すれば十分です(もちろんここでいう仕事とは、物理的な意味での仕事です)。

 

 位置エネルギーは、質量と重力加速度と重心の高さの変化の積で表されます。重心は像の中心にあるとします。位置エネルギーの単位はJ(ジュール)です。

位置エネルギーの変化)= 1.0×10^6 ㎏ × 9.8 m/s^2 × 12.5(sin45°-sin30°) m

            = 3.62×10^7 J

 

 仕事は、力の大きさとその力の向きに動いた距離の積で表されます。今回求めたいのは力の大きさなので、こちらをFとします。力の向きに動いた距離は、図よりバーフバリが綱を持って踏ん引っ張った距離×sin30°になります。バーフバリが引っ張った距離はだいたい3mくらいでしょうか。仕事の単位はJです。

(仕事)= F × 3.0sin30° m

    = F × 1.5 m

 

 物体の力学的エネルギーの変化と加えた仕事がした仕事は等しいことがわかっています。今回は、黄金像が始めに運動エネルギーを持っておらず、最終的にバーフバリが止めたときにも運動エネルギーはないので、力学的エネルギーは位置エネルギーだけです。すると、次の等式が成り立ちます。

 F × 1.5 m = 3.62×10^7 J

 ∴ F = 2.4×10^7 N

 

 ということで、バーフバリの力は2.4×10^7 Nだということがわかりました。

 

4.結局、どのくらいすごいの?

 こうして、バーフバリの力を数値にすることができました。しかし、あまりN(ニュートン)という単位になじみがない人も多いかもしれません。握力などの力はkgf(重量キログラム)で表されているので、この単位に直すと 2.4×10^7 N = 2.5×10^6 kgfとなります。つまり、バーフバリの力は2.5×10^6㎏のものを持ち上げることができるくらいです。

 

 先ほど挙げた通り自由の女神の質量は2.25×10^5㎏なので、バーフバリにとっては片手で持ち上げられるでしょう。東京タワーの重さが約4.0×10^6㎏ということなので、これが持ち上げられるかどうかといったところですね。

 

 これだけの力があるですから、そりゃ民衆だって彼を称えたくなりますよ。我々だって彼を称えたくなってしまいます。それでは皆さん、お手を拝借。バーフバリ!バーフバリ!バーフバリ!

 

5.補足

 ここまで、ゴリゴリと計算してバーフバリの力を求めてきたわけですが、いくつか補足しておきたいので記しておきます。読み飛ばしてもらっても構いません。

 

・黄金像の素材によっては、自由の女神と比較して質量を求めるのは不適切かもしれません。しかし、さすがにすべて金で出来ているとも考えにくいので、自由の女神と同じく中身は銅製で表面だけが金メッキされていると考えても良いでしょう。

 

・定滑車を用いても必要な力の大きさは変わらないので、今回の計算には関係ありません。実際には滑車があると力のロスが発生するので、無視はできませんが。

 

・力の向きに動いた距離ですが、今回は綱が像が動く方向と平行になっているわけではないので、綱を引いた距離と等しくはなりません。綱を引いた距離のうち、黄金像に対して垂直な分が力の向きに動いた距離になります。なお、厳密には綱を引いている間に黄金像の角度は変わるのですが、このような巨大な像に対しては無視できるほどです。

 

・誤差の範囲については、いずれの値も3倍以内には収まっていると思われます。最大で10倍程度の誤差が生じ得るわけですが、あくまでも今回は概算に過ぎません。バーフバリが何かしらの巨大建築を持ち上げられるという結論が出せたので、良しとしましょう。

 

・数学的、物理的な誤りがございましたら、コメント欄にてお知らせいただけると幸いです。速やかに修正等したいと思います。

 

バーフバリの話↓ 

presbr.hatenablog.com