映画の並木道

古今の映画や海外ドラマについて紹介しています。ネタバレは基本的になく、ネタバレするときは事前にその旨を記しています。

理系の人間が『エイリアン:コヴェナント』に思うこと

Alien Covenant Logo

 『エイリアン』シリーズの何作目かよくわからないけど、とにかく今のところ最新の『エイリアン:コヴェナント』をやっと観ました。これで、『エイリアンVSプレデター』シリーズを除いて、『エイリアン』シリーズは完走です。

 

 『エイリアン:コヴェナント』の美術とかは、前作『プロメテウス』と大体同じなので、『プロメテウス』の記事をお読みください。やっぱり、リドリー・スコットだけあって、このあたりはカッコいいなあと思います。


 

1.あらすじ

 舞台は『プロメテウス』の15年後。クルー15名と2000人の入植者を乗せた宇宙船コヴェナント号は、惑星オリガエ6に向かっていた。だが、その途中で人間らしき者による信号を受け取り、発信元の惑星に向かうことにする。

 

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2.キャスト

キャサリン・ウォーターストン

 『ファンタスティック・ビースト』シリーズのヒロインのティナ・ゴールドスタイン役でブレイクしました。『エイリアン』シリーズといえば、強い女性主人公が毎回出てくるわけですが、それが今回は彼女。これまでの主人公(シガニー・ウィーバーノオミ・ラパス)と比べると、優しい雰囲気の顔をしていますね。

 

マイケル・ファスベンダー

 『X-MEN』シリーズの若いマグニートー役で知られる他、『それでも夜は明ける』や『スティーブ・ジョブズ』などに出演しています。今回はアンドロイドのデヴィッドとウォルターを共に演じているんですが、彼は良かった。アンドロイド感がすごく出ていました。アンドロイドなんだけど、時に頼りになったり、時に頼り怖かったりするところがあって、そこのところがナイス。

 

3.ニュートリノの破壊力とは

 

 最初に、物語の本筋と関係ないんだけど、これだけは言わせてほしい。ニュートリノの衝撃波で船がダメージを受けましたってどういうこと⁉

 

 ニュートリノとは、素粒子の一種のことです。電荷はゼロで、質量はわずかだけどある(昔はないと思われていた)粒子です。ニュートリノの特徴の一つが、物質とほとんど反応しない、すなわちニュートリノがぶつかっても何も起こらないこと。現に、1秒間であなたの体を数百兆個のニュートリノが通り抜けています。だけど、何も感じませんよね(何か感じるなら、いますぐ東大のニュートリノ観測センターに行って、ニュートリノの検出を手伝ってください)。

 

 ニュートリノを観測するには、今のところカミオカンデという、とてつもなくデカくて精密な装置が必要です。それほどに、検出が難しく、どんな物質とも反応しないのです。だから、普通に何かを作ったりしている限りは、ニュートリノのせいで不具合が起きるということは100%ありません。どれだけやわな物を作っても、です。

 

 ガンマ線バーストの影響で船が破損したと言えば良いものを、下手にカッコつけようとするから、こういう科学的間違いを引き起こしてしまいます。このくらいの知識は基礎だと思うので、SFを書く際には気を付けてください。

 

4.人類の起源は?

 『プロメテウス』を観ていて期待していたのが、「『コヴェナント』では、人類の起源に迫るんじゃないか」ということです。だって、『プロメテウス』であの巨人が人類の起源だと説明していて、最後には「なぜ、彼らは今度は人類を滅ぼそうとするのか」みたいな疑問で締めていたじゃないですか。だから、今度はもう少し巨人の方のストーリーを掘ってくれるのかなと思ったわけですが、今回は完全にスルーしましたね。

 

 生命の起源って、科学の究極のテーマでもあるので、こっちの方を掘っても面白いかなと思ったんですけどね。そもそもSFだから、そこのところは想像をたくましくしてもらって、上手い感じの人類の起源を付けてくれれば、それでも良かったんです。

 

 こんなことを言うのも、自分が『プロメテウス』を観ていて、最近読んだJ.P.ホーガンの『星を継ぐもの』というSF小説を連想してしまったからなんです。この小説は、SF小説の名作ではあるのですが、知ってる人はあまりいないかもしれません。すごく面白いです。自分が『コヴェナント』に期待していたようなストーリーが、かなり高い完成度で実現されています。

星を継ぐもの (創元推理文庫) [ ジェームズ・P.ホーガン ]

 

5.アンドロイドはエイリアンの夢を見るか(ネタバレ)

 今回巨人の話の代わりにメインとなるのが、アンドロイドの話。『ブレードランナー』的テーマが扱われることになります。

 

 軽くおさらいをしておくと、アンドロイドのデヴィッドは、エイリアン菌(?)をばらまくことで、巨人たちを皆殺しにしました。そのときに、エイリアン菌が巨人に寄生して誕生したエイリアンを研究したりしています。今度は、人間にも寄生させて、新たなエイリアンを作り出そうとしています。

 

 デヴィッドの目的は「創造」すること。それが、人間とアンドロイドの違いであると考えているのです。そのため、彼はエイリアン菌を巨人や人間に寄生させることで、それまでは存在しなかった新たな生命体を生み出しました。

 

 『ブレードランナー』に出てきたレプリカントたちの最も思いが、「生」への執着であったのと比べると、若干違いが見られますね。これは、レプリカントには寿命があったのに対して、デヴィッドたちは理論的には永遠に生きられるように作られていることに起因しているのでしょう。

 

 人間と機械の違いは「創造」にあるという考えですが、自分はこの考えに半分賛成で、半分反対。というのは、生物の定義って色々あるんですが、自分が考えるに「自己保存」が一番大きな特徴だと思うんです。できるかぎり自分を残そうとするという行為のことです。具体的には、自分が襲われたら身を守り、自分が死ぬ前には子孫を残して自分のDNAを残すといったところです。機械はこんなことはしません。

 

 だから、もし寿命があるならば、子孫を創造することは生き物の必須条件になります。でも、デヴィッドは死にません。つまり、生物的な意味では、創造する意味はなくなります。

 

 しかし、別の観点で見れば、デヴィッドが創造をする理由も考えられます。それは、「人間とその他の生物の違いは創造することにある」という考え方です。自分は、このように人間を特別扱いする考え方はあまり好きではないのですが、一理ある意見かもしれません。デヴィッドが人間になりたいのであれば、そのときは「創造」が必須となるわけです。

 

6.まとめ

 『エイリアン:コヴェナント』は、『プロメテウス』よりもアクションを増し、さらに『ブレードランナー』的なテーマも持ち込んでおり、前作より面白い作品になっていました。前作をなかったものにするかのような急な方針転換に、自分は驚いてしまったのですが。期待していた方向ではなかったにしろ、そのテーマは十分に面白いもののだったと思います。

 

 そして、あの”エイリアン”の姿を見ることができたのは、とても嬉しかった。やっぱり、エイリアンはこうでなくちゃ。その凶暴さで、地球上のすべての人類を震え上がらせる存在でなくてはいけません。これからもそうであってくれ、エイリアンよ。

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