映画の並木道

古今の映画や海外ドラマについて紹介しています。ネタバレは基本的になく、ネタバレするときは事前にその旨を記しています。

映画『エイリアン』シリーズは若手の登竜門だ!

Alien, H.R. Giger


 前々から思っていたのですが、『エイリアン』シリーズの監督って、今からするとものすごく豪華なんです。でも、当時はまだそれほど売れていない監督たちだったわけですから、『エイリアン』には先見の明があるように思うのです。ということで、今回は『エイリアン』の監督たちに注目!

 

 

1.『エイリアン』リドリー・スコット

 まずは第一作『エイリアン』(1979年)の監督リドリー・スコットです。主な代表作に『ブレードランナー』(1982年)、『ブラック・レイン』(1989年)、『オデッセイ』(2015年)などがあります。いずれも名作です。さらに、2000年に公開された監督作『グラディエーター』は、アカデミー賞作品賞を受賞しました。

 

 そんな彼の監督第2作が『エイリアン』になります。監督デビュー作の『デゥエリスト/決闘者』(1977年)がカンヌ映画祭で高い評価を受け、大作デビューとなったのが本作。結果、興行収入、批評家からの反応はおおむね良好。この成功により、彼はさらに独自の世界観を追究した『ブレードランナー』の制作に取り掛かることになります。

 

 本作の作風は、SFホラーといった感じで、薄暗く不気味な雰囲気が漂っています。この雰囲気はは『ブレードランナー』や『ブラックレイン』などの作品とかなり共通しています。

 

2.『エイリアン2ジェームズ・キャメロン

 『エイリアン2』(1986年)の監督はジェームズ・キャメロンになります。主な監督作に現在、歴代興行収入第2位の『アバター』(2009年)、第3位の『タイタニック』(1997年)や『ターミネーター』(1984年)があります。言わずと知れた『タイタニック』はアカデミー賞で作品賞含む、歴代最多の11部門を制しています。

 

 彼の監督第4作がこの『エイリアン2』になります。第4作ではありますが、それまでの監督作はいずれもB級であり、大作となるとやはり本作が初になります。『エイリアン2』の前の作品が『ターミネーター』でした。今でこそ、『ターミネーター』は超有名作ですが、製作費はB級映画並みで、興行収入から見ても大ヒットとは言えませんでした。ですが、評価は高く、これがきっかけで『エイリアン2』の監督を任されることになります。

 

 本作の作風は『エイリアン』とはうって変わり、ハリウッド大作娯楽映画になっています。後に歴史に残る大ヒット作を生み出すことになるジェームズ・キャメロンの端緒が垣間見られます。

 

3.『エイリアン3』デヴィット・フィンチャー

 3作目の監督はデヴィット・フィンチャーになります。奇才として知られ、主な監督作に『セブン』(1995年)、『ファイト・クラブ』(1999年)、『ソーシャル・ネットワーク』(2010年)などがあります。いずれも重く暗い作風が特徴となっています。

 

 彼の初監督作品が『エイリアン3』(1992年)になります。『エイリアン』シリーズ3作目ということで、監督初作品にしては破格の製作費がかけられました。しかし、製作上のトラブルが多発し、批評家からの評判もよくありませんでした。確かに、本作にはデヴィット・フィンチャー作品で特徴的な重く暗い雰囲気があまり見られません。

 

 そういうわけで、監督第1作にして酷評されてしまったフィンチャーでしたが、次に監督した『セブン』は成功。おかげで、今になっても映画を作り続けています。誰だって最初は上手くいかないことだってあります。

 

4.『エイリアン4』ジャン=ピエール・ジュネ

 『エイリアン4』(1997年)の監督はフランスのジャン=ピエール・ジュネになります。代表作は『アメリ』(2001年)、『天才スピヴェット』(2013年)などがあります。

 

 彼の場合、『エイリアン4』は監督第3作であり、すでにある程度成功していたため若手とは言えないかもしれません。ですが、ハリウッド作品はこれが初になります。また、この次に監督する作品があの『アメリ』になります。SFホラーの『エイリアン4』から心温まる恋愛映画『アメリ』を撮るというのは、振り幅が大きく、なかなか尋常じゃないことですね。

 

5.本当に面白いのはどれだ!

 そんな名だたる名監督たちが、キャリアの比較的初期に監督した『エイリアン』シリーズ。一体最も面白く仕上げることができたのは誰だろうか?各種指標で比較してみよう。

 

(1)世界興行収入

 『エイリアン』1億0493万ドル

 『エイリアン2』1億3106万ドル

 『エイリアン3』1億5977万ドル

 『エイリアン4』1億6129万ドル

 世界興行収入は見事に1億ドル台が並ぶ結果となった。シリーズが進むにつれて増えてはいるが、インフレを考えるといずれも大した差はないように思われる。

 

(2)Rotten Tomatoesトマトメーター

 続いてアメリカの映画レヴューサイトRotten Tomatoesを見ていきます。このサイトでは、批評家の評価と一般人の評価がそれぞれトマトメーターとして出されています。100%の場合は全員が好意的な評価をした、0%の場合は全員が悪い評価をしたということになります。

 『エイリアン』批評家97% 一般人94%

 『エイリアン2』批評家99% 一般人94%

 『エイリアン3』批評家42% 一般人47%

 『エイリアン4』批評家56% 一般人39%

 『1』と『2』は面白くて、『3』と『4』はつまらないということらしいです。特に『3』でがっかりしてしまった人が多いのでしょう。

 

(3)Filmarks評価

 次に日本最大の映画レヴューサービスであるFilmarksの評価を見ていきましょう。5つ星が最高評価です。

 『エイリアン』 3.8

 『エイリアン2』 3.8

 『エイリアン3』 3.2

 『エイリアン4』 3.4

 やっぱり、『3』が1番低いです。でも、Rotten Tomatoesほどは酷評されていないようです。というか、『1』『2』の評価もやや低い気がします。

 

(4) 私の評価

 映画が面白かったかどうかを決めるのに1番重要なのは、やっぱり自分の評価です。たとえ周りの評価が低かったとしても、自分が面白いと思えばそれは面白いのです。結局は自分の評価が絶対。ということで、あくまでも私個人の感想ですが、書いてみたいと思います。

 

 結論から言ってしまうと、私が1番好きなのは『1』です。得体のしれないエイリアンの恐怖がひしひしと伝わってきます。それに加えてアンドロイドも強く印象に残っています。世界観も『ブレードランナー』(私が1番と言っても良いくらい好きな作品)に似ていることもあり、ダントツで『1』が好きです。

 

 『2』はフランチャイズ化されてしまった雰囲気が、マイナスポイントです。確かに娯楽映画としては、すごく面白いです。エイリアンVS人間という構図はとても分かりやすいし、戦いも迫力があります。でも、私が好きな『1』の雰囲気やエイリアンの恐怖がないのが残念。

 

 『3』は正直忘れてしまった。あまりストーリーに評価がひねりがあるわけでもなく、普通のSF映画になってしまっていたような気がする。『4』はすみません、未見ですm(-_-)m。機会があったら見てみます。

 

6.偉大なるエイリアン

 というわけで、今回見てきた4人の監督にとって、『エイリアン』シリーズは人気監督への架け橋となったようです。そんな彼らは今は名監督として様々な作品を作っています。彼らの原点となった『エイリアン』シリーズ、一度見てみてはいかがでしょうか?