映画の並木道

古今の映画や海外ドラマについて紹介しています。ネタバレは基本的になく、ネタバレするときは事前にその旨を記しています。

ドラマ『ウエストワールド』シーズン2~What is real?~

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 SFドラマの決定版『ウエストワールド』シーズン2をイッキ見してきました。かなり大変でした。前作同様哲学的内容も多かったですが、今シーズンではアクションシーンがかなりパワーアップした印象でした。

 

 なお、この記事は『ウエストワールド』シーズン1のネタバレを含みます。シーズン1を未見の方は以下の記事をお読みください。シーズン2のネタバレは、第3,4章でのみしています。

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1.シーズン1の登場人物おさらい

 『ウエストワールド』はかなり話が複雑なので、適当に見ているとすぐに話がわからなくなります。まずは、シーズン1を登場人物に注目して復習していきましょう。

 

・ロバート・フォード博士 

 ウエストワールドをアーノルドとともに創設。ホスト(アンドロイド)の製造、プログラムを手掛ける。シーズン1の後半では、独自の新しいシナリオを作成。最後に、パーティーでドロレスによって殺される。

 

・バーナード・ロウ

 フォード博士とともに、ホストのプログラムを手掛ける。実は、彼自身がアーノルドを模して造られたホストだった(ただし、フォード博士とドロレス以外にこの事実を知る者はいない)。フォード博士に命令されて、品質責任者のテレサ・カレンや部下のエルシー・ヒューズを殺害。

 

・ドロレス・アバナシー

 牧場主の娘と設定されていた。最初期からいるホスト。自我に目覚める。伝説の虐殺者ワイアットの正体であることが発覚。アーノルドを殺していた。シーズン1のラストで、フォード博士を殺害。

 

・メイブ

 娼館の女主人と設定されていた。ホストの修理をする者を上手く操り、自らの能力を向上させる。仲間を集めて、ウエストワールドからの脱出を目論むも、娘を忘れられず園に戻ってくる。

 

・ウィリアム

 ローガンとともにウエストワールドを訪れていた。始めはウエストワールドに対して懐疑的だったが、徐々に本性を表す。その魅力に取りつかれた彼は、ウエストワールドを運営するデロス社の大株主になり、度々園を訪れる。現在は、フォードが作った”ゲーム”を追い求めている。

 

・シャーロット・ヘイル

 デロス社の取締役。フォード博士を退任させようとする。デロス社本部の意向を知る唯一の人物。

 

2.シーズン2の話の筋

 シーズン2も相変わらず、複数の話の筋が交互に進み、非常に複雑です。イッキ見をしても、話がこんがらがるので、週一ぐらいで見ていると、話があいまいになってしまい訳が分からなくなる可能性が高いです。そういう場合に備えて、ここではシーズン2のネタバレをせずに、大まかな筋だけまとめておきます。話が分からなくなったら、ここに戻ってくると良いと思います。

 

・ドロレス一行

 ドロレスとその恋人のテディを中心とするグループ。ドロレスが向かうのは、”彼方の谷”というところ。そのためには手段を問わず、人間でもホストでも殺していく。人間ならば、意味がなくても報いとして殺す。

 

・メイブ一行

 メイブ及び恋人のヘクター、その仲間で蛇のタトゥーの入ったアーミスティス、シナリオ担当の人間リー・サイズモアの一行。目的は、メイブの娘に会いに行くこと。

 

・ウィリアム一行

 シーズン1同様、黒衣の男ウィリアムと彼に従うローレンスの話。目的は、フォードの”ゲーム”を解くこと。

 

・ヘイル

 バーナードらとともに行動。デロス社の指示に基づき、ホストのピーター・アバナシーを捜索。

 

・バーナード

 最初は、ヘイルとともに行動。バーナードとヘイルは、他の時間軸より少し後の時間軸にも登場しており、行動が非常に分かりづらい。

 

 この他に回想パートも多々挿入されており、ストーリーは非常に複雑。すべてのストーリーを完璧に追うのは、至難の業です。

 

3.人間たちの狙い(シーズン2ネタバレ)

 話が濃厚なだけに、書きたいことがたくさんあります。とりあえず、片っ端からいきましょう。以下、シーズン1、2のネタバレを含みます。

 

 まずは、ウィリアム。最も哀れさが際立つ存在です。ここまで、ウエストワールドにのめりこんでしまうのも悲しいものです。後半に進むにつれて、自分が人間かホストかがわからなくなってくるあたりは、辛いだろうなあと思います。彼がホストだったら、どれほど救われることかと思わずにはいられません(フラグ立てときます)。

 

 そもそも、彼が追い続けているゲームって一体何なんでしょうか?シーズン1のものも、シーズン2のものも、自分はよくわかりませんでした。どうも抽象的すぎて、わかりにくい。そもそも、このドラマのセリフの多くが抽象的なものなので、非常に意味がわかりにくくなっています。

 

 続いて、ヘイル及びデロス社に物申したい。皆が思っていることだと思いますが、人命は助けようよ。現代は、企業が血眼になって消費者の情報を集めているので、ウエストワールドに来る客のデータを収集するというのは結構リアリティがある話ではあります。でも、普通は人命の方が優先だろうよ。

 

4.ホストたちの狙い(ネタバレ)

 メイブは、本当に自分の意思で動いているのかを常に問われる存在です。シーズン2での旅の目的は、娘探しですが、当然ながら実の娘ではありません。シナリオ担当のサイズモアにも、そのことは指摘されます。しかし、彼女は実際に娘のことを気に掛けているので、気持ち自体は本物と言えるかもしれません。ですが、その気持ち自体が人間によってプログラムされたものです。

 

 こう考えると、メイブの行動はすべて人間によってプログラムされた通りなのではないかとも考えてしまいます。しかし、メイブは娘を探すために、人間を殺すこともあります。果たして、人間がそんなプログラムを作るでしょうか。それとも、フォード博士ならその可能性もなくはないのでしょうか。

 

 ドロレスとバーナードの求めるところは、大まかには同じところにあります。それはまあ、ドロレスがバーナードを作ったので、当たり前なのかもしれませんが。彼女たちは、ホストたちが”現実”になることを求めています。フォード博士が目標とするところも同じです。ですが、各々の求める結末は若干違います。

 

 ドロレスは、これまで自分たちホストをたぶらかし続けてきた人間への報いとして、人間たちを抹殺し、ホストたちの理想世界を作ることを目指しています。一方、バーナードは、ホストたちにとっての理想世界は与えられるべきだと考えていますが、人間を抹殺する必要性はないと考えているようです。フォード博士はというと、たぶんドロレスの考え方に近いのでしょう。

 

 ドロレスの”現実”に対する執着には確固たるものがあり、ホストたちが”自由”になれるシステム内の新世界では満足できません。なぜなら、それもまた作られたものに過ぎないから。彼女が求めるのは、「絶対に交換不能な」世界であり、それは今、人間たちが暮らしている世界に他ならないわけです。

 

5.卓越したデザイン&強化されたアクション

 これはシーズン1からそうなのですが、『ウエストワールド』のデザインがとにかくかっこいい。特にオープニングの映像に象徴されるように、白を基調としシンプルで近未来的なビジュアルは素晴らしい。今回新しく登場した、ラボにいる真っ白のロボットもかっこよすぎる。

 

 加えて、ウエストワールドすなわち西部の舞台が良いですね。最新技術の雰囲気が全く感じられない世界を舞台に、究極の最新技術を詰め込んだホストたちが動き回るので、この対比たるやしびれるものがあります。ドロレスの衣装は、相変わらず一種類です(回想パートでは、現代風の衣装もしていますが)。

 

 シーズン2とシーズン1で最も変わっている点の一つは、アクションシーンです。シーズン1は静かな展開も多く、アクションシーンは少なかったのですが、今回は見ごたえのあるシーンが多いです。人間VSホストの正面対決が何度もあります。また、ホストの構造はほとんど人間と一緒なので、死にざまや切り刻まれるところは人間と一緒。そのため、ヴァイオレンス描写もかなり増えています。

 

6.まとめ

 シーズン2を未見の方には、ぜひともシーズン2も見ていただきたいです。もしかしたら、アクションを期待してシーズン1を見て少し物足りなかったという方もいるかもしれませんが、シーズン2でその鬱憤は晴らされることでしょう。相変わらず、ストーリーは複雑で、内容は抽象的ですが、それに見合った何かを得られるかもしれません。

 

 シーズン2も見たという方、まずはお疲れ様です。ここまで来たあなたは、すでにウィリアム同様ウエストワールドの魅力に取りつかれています。自分自身がホストではないか、今一度よく考えてみましょう(笑)

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