映画の並木道

古今の映画や海外ドラマについて紹介しています。ネタバレは基本的になく、ネタバレするときは事前にその旨を記しています。

映画『ドクター・スリープ』~スキャナーズを少々~

"The Shining" - Still 10

 『シャイニング』の待望の続編『ドクター・スリープ』を観てきました。かなりハードルは高かったと思いますが、十分期待に応えている作品に仕上がっているなという印象でした。

 

 

1.あらすじ

 40年前の事件を生き延びたダン(ダニー)・トランスは、その後シャイニングの能力を隠して生きてきた。一方で、同じシャイニングの能力を持つ少女アブラは、少年が殺される瞬間見てしまい、ダンに助けを求める。

 

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 監督は、ホラー映画を得意とするマイク・フラナガン。主演は、『トレインスポッティング』や新スター・ウォーズ3部作のユアン・マクレガー

 

2.キャスト

ユアン・マクレガー as ダン・トランス

 ダニー・ボイル監督の『トレインスポッティング』でブレイク。スター・ウォーズ新3部作のオビワン・ケノービ役でも知られます。昨年の『プーと大人になった僕』に続き、今作ではダニー・トランス役と、なぜか「大人になった」シリーズが続いている(笑) 50歳近いのに、全くそうは見えないその若さゆえか。

 

レベッカ・ファーガソン as ローズ・ザ・ハット

 『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』及び『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』ではヒロインを演じています。今回は、ローズ・ザ・ハット役ということで、文字通りまさに美魔女。

 

・エミリー・アリン・リンド as アンディ

 子役のころから、ハリウッドで活躍。ドラマ『リベンジ』では、主人公の子供時代を演じていました。可愛かったけど、怖かったなあ。

 

・ザーン・マクラーノン as クロウ・ダディ

 実際にネイティブ・アメリカンの血を受け継ぐ、数少ない俳優です。ドラマ『ウエストワールド』でも、ネイティブ・アメリカンのアンドロイドとして出演しています。

 

ジェイコブ・トレンブレイ as ブラッドリー・トレバー

 現在、最も勢いのある天才子役です。『ルーム』や『ワンダー 君は太陽』で主役をし、その演技が高く評価されています。彼をこの役で使うんですね。意外。

 

ヘンリー・トーマス

 終盤で登場する、ホテルのバーテンダーを演じています(観た人には、誰のことかわかりますよね)。皆さんはこの人を以前に、一度は絶対に観たことがあるはずです。実は、彼は『E.T.』の主役のエリオット少年でした。面影ねえなあ(笑) ここから、また活躍できると良いですね。

 

3.勝手に考察(ネタバレ)

 たぶん、色々な考察記事・動画が出ているかとは思いますが、ここで自分の考えを示しておきたいと思います。まだそういった記事・動画を見ていないので、主観での考えです。間違っている(正解があるとして)かもしれませんが、そこは「こんな考え方もあるんだな」と思っていただければ幸いです。

 

 最初にディック・ハロランの件からいきましょうか。ダニーにシャイニングを教えてあげる黒人の方ですね。今回登場する彼は、まあダニーの頭の中の人でしょう。『シャイニング』で、殺されてますからね。いきなり現れたり、年を取らなかったりするところからも明らか。

 

 そこから導かれるように、最後のダニーもアブラの頭の人です。つまり、ダニーはホテルで幽霊たちとともに死んでしまったのですね。

 

 そして重要なポイントが、この映画によって『シャイニング』の解釈も変わってくることです。これまで『シャイニング』は、ジャック・トランスが孤独やプレッシャーから狂ってしまって、それをホテルが助長するような形になり、家族を襲ってしまう話だと思っていました。だから、ずっとなんでこの題名にしたのか、よくわからなかったんですよ。だって、ほとんどダニーのシャイニングが、そんなに効果的に使われているような印象がなかったんです。むしろ、『ジャック・イン・ホテル』とか、ジャックの方に主眼が置かれたタイトルの方がふさわしいんじゃないかと。

 

 でも、『ドクター・スリープ』を観ると、どうもそうではなかったらしいです。ジャックは、ホテルに乗っ取られてしまい、家族を襲ったと考える方が自然。あくまで、ジャックの孤独やプレッシャーは補助的な要素か、ホテルがその要素を増幅させたのか。いずれにしても、”ホテル”は自分が思っていたよりも、主体的に動いていたようです。

 

 そう考える根拠は、ダニーが終盤にホテルの取りつかれたことにあります。ダニーは父親と同じように、斧を持って子どもを襲い始めることになります。ここで、急にダニーが狂い始めたと考えるのは不可能で、ホテルに取りつかれたと考えるしかありません。とすると、前回のジャックも同じ理由で、同じ行動を取ったと考えられ、すなわちジャックもホテルに取りつかれたと考える方が自然になるのです。

4.この続編は成功か(ネタバレ)

 このように、『ドクター・スリープ』では、映画『シャイニング』の解釈をほぼ180度変えるようなことになっているんです。だから、映画『シャイニング』の続編とするなら、ちょっと不自然な印象もあります。キューブリックからしたら面白くないのかもしれませんが、でも映画自体が面白くないわけではありません。

 

 今作は、『シャイニング』よりも、”シャイニング”要素にフォーカスした作品になっています。 新たな見所は、様々なところで展開されるシャイニング・バトル。アブラがローズの頭に入ったり、逆もあったり、シャイニングを使って罠を仕掛けたりと、シャイニングを大いに生かした描写が非常に面白い。

 

 簡単にまとめるなら、『シャイニング』はジャックの狂気を全面に出した作品であるのに対し、『ドクター・スリープ』はシャイニングという能力を大きく取り上げた作品ということになります。そのため、『シャイニング』は人間(ジャック)の怖さが目立つのに対し、『ドクター・スリープ』は幽霊たちの怖さの方が印象に残ることになります。どちらも面白いのには変わりありませんが、いずれにしろめちゃくちゃ怖いのは確かです。

 

5.まとめ

 傑作『シャイニング』の続編を作るというのは、とてつもなく難しいことです。『ブレードランナー』と同じくらい。でも、『ブレードランナー2049』が前作に劣らず名作であったように、『ドクター・スリープ』もその完成度はかなり高いです。『シャイニング』の解釈を大きく変えるような内容になっているので、そこはもしかしたらキューブリック版のファンは気に入らないかもしれませんが。

 

 めちゃくちゃ怖いし、アクションも見どころが多いので、映画単体としての出来はとても良いです。素直に、面白かった。例えるなら、超能力バトル要素が強まったということで、『シャイニング』に『スキャナーズ』を少々振りかけた感じでした。これで伝わるかな?

 

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