映画の並木道

古今の映画や海外ドラマについて紹介しています。ネタバレは基本的になく、ネタバレするときは事前にその旨を記しています。

映画『スキャナーズ』~ドカーン~

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 70年代の娯楽映画は、アイデア勝負でした。いかに面白いアイデアを基に映画を作ることが出来るかということを気に掛けていたように思います。今も面白いアイデアがあるに越したことはないですが、CGなどの技術を駆使すれば、それだけでも映画をヒットさせられる時代になりました。

 

 

1.あらすじ

 ベイルはある研究所に捕まり、自分は超能力者(スキャナー)だと告げられる。そして、同じ超能力を持ち、世界征服を狙うレボックを阻止するように言われる。(1981

年公開)

 


Scanners - Trailer (HD) (1981)


 

2.ぐちょぐちょの監督

 監督は、デヴィッド・クローネンバーグ。後に、『ザ・フライ』(1986年)を撮ることになる監督です。この人は、グロ映画の名手として知られています。ぐちょぐちょで気持ち悪い映像が得意です(自分も、改めて『ザ・フライ』の画像を見てみたら、気持ち悪くなりました)。

 

 本作にもその趣向は表れています。特に、序盤の頭が爆発するシーンは、かなり有名。今でも『キングスマン』(2014年)などで頭が爆発しますが、この映画が元祖だったりするのでしょうか?

 

 あとは、ラストの超能力対決も見どころ。顔の血管が異常に盛り上がったりと、なかなか気持ち悪いです。気持ち悪いんだけど見入ってしまう。そんな不思議な魅力があります。でも、今回はクローネンバーグにしては手加減した感じかもしれません。

 

3.アイデア勝負!

 『スキャナーズ』は超能力者が戦う話ですが、実はさっきのように頭が爆発するような派手なシーンは少ないです。大半は、スキャナーが相手の方を見ると、相手が鼻血を出して、勝手におかしくなっていってしまうシーンです。これを、普通に見せたところで、何やってるの?となるだけです。おそらく、予算と技術的な問題で、いちいち派手な演出をつけることは出来なかったのでしょう。

 

 それでも、そこをちゃんとスキャナーの仕業に見せているのが、『スキャナーズ』のうまいところ。ここで鍵になるのが、実は冒頭の頭が爆発するシーンです。これがあることで、観客はスキャナーの能力を受け入れ、後の展開に説得力が出てきます。つまり、最初に派手なシーンを見せることで、後に続くシーンでも緊張感を保てているのです。

 

 このようなことを行っている映画に『ターミネーター』(1985年)があります。この映画で、実際にシュワちゃんがロボットになるのは終盤だけです。ほとんどは、がたいの良いおっさんがサラ・コナーを追いかけまわす話で、ロボットは出てきません。それでも、このおっさんはロボットなのだと観客に思わせることで、面白くなっています。

 

 『スキャナーズ』の話に戻ると、こういったある程度の説得力を持っているおかげで、ストーリーは面白い。ベイルVSレボックという対決に、陰謀などが盛り込まれて、ちゃんとストーリーとして飽きさせない。元のアイデアは「超能力対決」ということなのでしょうが、きちんと展開があり、肝心の超能力の使い方も上手く、娯楽作として面白いです。

 

4.ジャック・ニコルソン

 見ている間は、レボック役はジャック・ニコルソンだとずっと思っていたのですが、違いました。実際は、「カナダのジャック・ニコルソン」ことマイケル・アイアンサンドでした。

 

 それにしても、よく似ています。特に、薄い唇とかは完全にそう。それに、レボックが狂気に駆られた悪役ということで、いかにもジャック・ニコルソンがやりそうな役です。ジャック・ニコルソンといえば、『シャイニング』(1980年)のジャック・トランスや、『バットマン』(1989年)のジョーカーを演じています。同じような顔をしていると、自然と似たような役が回ってくるのでしょうか?

 

5.まとめ

 若干古めの映画ではありますが、ストーリーは普通に面白かったです。それ以上に、このビジュアルは必見。特に、クライマックスの超能力対決は、とても見ごたえがあります。ホラー映画好きの人には特におすすめ。ゾンビ映画好きの方も、このビジュアルは気に入っていただけると思います。

 

 今回は、クローネンバーグ監督の作品にしては、グロが少なめです。ぜひ、もっとグロいものを見たいと思ったら、クローネンバーグの他の作品もぜひ見てみて下さい。