映画の並木道

古今の映画や海外ドラマについて紹介しています。ネタバレは基本的になく、ネタバレするときは事前にその旨を記しています。

映画『モールス』~これは傑作~

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 私は特段ホラーが好きというわけではないのですが、最近ホラー映画を見ることが多い。amazon primeで何見ようかなと探していると、自然とホラー系の映画を選ぶ。これまであまりホラーを見てこなかったのだが、そのためにホラーが未開拓分野になっていて、自然と求めているのかもしれない。ということは今後もホラーをよく見るのかな?

 

 今回は『モールス』(2010年)です。あまり期待はしていなかったし、途中でこれはやってしまったのではないかと心配になりましたが、実はかなり良い作品でした。こういう発見があるから映画はやめられない。

 

 

1.あらすじ 

 いじめられっ子のオーウェンと隣の部屋に、アビーという少女が引っ越してくる。孤独な2人はやがて惹かれあっていく。一方、町では猟奇連続殺人事件が起きていた。これ以上はネタバレになってしまいます。

 

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 本作は『ぼくのエリ』(2008年)というスウェーデン映画のリメイクです。ですが、こちらの紹介を読んだりすると即本作のネタバレになるので、観賞前にググらないでください(タイトルの時点で分かってしまう可能性もあるため、ここでは略称を書いています)。映画を見始めれば比較的すぐにわかることではありますが。

 

 主演はクロエ・グレース・モレッツ。とにかく、彼女はかわいい。しかも、演技ができる。このときは、まだ14歳ですよ。凄いよ。彼女を見るためだけにこの映画を見ても良いと思う。

 

 ちゃんとした紹介をすると、彼女は1997年生まれで現在22歳。『キックアス』(2010年)で一躍有名になり、同年に公開された本作で演技の実力も評価されます。そこから『ヒューゴの不思議な発明』(2011年)、『ダーク・シャドウ』(2013年)、『サスペリア』(2018年)など様々な作品に出演。現在、最も名実ともに併せ持つ若手筆頭の女優です。

 

以下すべてネタバレを含みます。お気を付けください。

 

2.怖さと謎(ネタバレ)

 最初は怖さと謎が入り交じった感じでした。男が殺人を犯したりしているのだけれど、何のためにしているのか分からない。しかも、血を抜き始める。ここで察しがつかないわけではないのだけれど、この時点ではまだ本人が直接吸わないことにちょっと違和感を感じます。アビーもなぜか裸足。

 

 また、いじめがなんとも陰湿ですね。アメリカの映画とかによく出てくるいじめって本当に不愉快です。日本でもあるのかもしれないけど、自分はよく分からない。現実にはそんなことがあってほしくないと思いますね。

 

3.少女の真実(ネタバレ)

 中盤ぐらいで、彼女が実は怪物(ヴァンパイア)だったと分かります。ここで、私はハズレを引いてしまったと思いました。まじめな雰囲気出しておいて、ヴァンパイアとなるとちょっと先が心配になってしまいます。そもそもヴァンパイアって設定がきつい。太陽光に直接当たるとダメって、弱すぎる。他にも弱点が多すぎて、怪物にしても弱すぎる。そんなヴァンパイアが苦手な私でも、本作においては自分の心配は杞憂に終わりました。

 

 何が良かったかって、一つはアビーの親父っぽかった人が実は親父じゃなかったこと。オーウェンと同じくらいの年のときにアビーに恋をして、それからずっと一緒にいたわけでしょ。そして、彼女のために血を集め続けてきた。そして、最後にはアビーを守るために強酸を自らかけて死ぬ。こうやって彼の行動の真意が分かった瞬間に、泣けるぐらい彼がかっこよく見えてくる。こんなに一途なことがあって良いのだろうかって。

 

 もし、彼がアビーの親父だったら感動は半減すると思う。だって、ヴァンパイア同士上手くやっていくのは当然だし、殺人を犯すことには彼自身の利益にもなります。しかし、彼は普通の人間だったので、彼自身には人を殺すメリットは何もありません。それでも、彼女のためだけに殺人を犯し続ける。そんなの切なすぎる。

 

4.少年の決意(ネタバレ)

 そしてもう一つのポイントがオーウェンが下した決断。彼女が怪物だと知ってしまった彼は、それでも彼女への思いを持ち続けているのです。彼女の方も普通は彼のもとを去りそうなものだが、もう一度接触を試みます。そして、彼は彼女の凶行を見たうえで、決意を固め共に生きていくことにします。ヴァンパイアと生きるとはこういうことなんだと知った上で、この決断を下すオーウェンがまたかっこいい。

 

 ちなみに、本作の原題は”let me in”。「私を中に入れて」という意味。これは直接的にはアビーがオーウェンに部屋に招き入れてもらうところに出てきます。ただ、アビー自身孤独であり、ソウルメイトを求めていたので、こちらの意味が込められていると考えるのが自然でしょう。日本語タイトルの「モールス」はいまいちパッとしない。

 

 もう一つ蛇足で加えるなら、かわいいクロエちゃんがいきなり怪物になるというのはなかなかの衝撃映像ですね。このギャップが怖いところであり、惹かれるところでもありますね。

 

5.まとめ

 良い映画です。これは。素直に切ない。怖さもある。そして、クロエちゃんが見られる。もし、クロエちゃんの作品をまだ見たことがないのなら、本作からというのも良いと思います。彼女のかわいさと演技力が見られて、とんでもない女優だと言うことが分かります。この後にどんどん成熟した女優となっていく姿が見られるので、なお楽しいです。