北欧の大人気ミステリー『特捜部Q』シリーズ第一弾です。いろんな国にミステリー映画・小説存在しますが、今最もクオリティが高い地域の一つが、北欧です。そんな北欧ミステリーの入門として、この『特捜部Q』はおすすめです。
1.あらすじ
事件の捜査で怪我を負ったカール・マークが復帰して配属されたのは、過去の事件の書類を整理する部署「特捜部Q」。唯一の同僚となったアサドとともに仕方なく仕事を進めるカールだったが、その中で5年前の女性政治家失踪事件に疑問を抱く。二人は、真相を明らかにするために、捜査を始める。
2.特捜部Qとは
実は私が『特捜部Q』シリーズを観るのは、これが初めてじゃなくて、すでに二作目の『キジ殺し』の方を先に観てしまったんですよね。でも、作品ごとの話のつながりは、ほとんどないので、どこから観始めても大丈夫です。気になったタイトルの作品から観始めるというのも、ありだと思います。
特捜部Qは、あらすじにも書いた通り、元々は書類整理のためだけにある末端部署でした。実質的に、怪我をしたカールを置いておくためだけの部署であり、ほとんど意味はないはずでした。
しかし、刑事としての自覚が強いカール・マークは、そんな部署の中でも過去の事件に疑問点を見つけて、捜査を始めます。だから、特捜部Qで扱われるのは、基本的に過去の事件ということになります。
この特捜部Qで、カールの唯一の仲間となるのがアサド。もともとは、シール貼りをしていたそうです。彼は、特捜部Qに来たことで、やっと事件に関われるようになりました。『キジ殺し』では、この特捜部Qに、新たに女性メンバーが加わることになります。
3.カール&アサド
『特捜部Q』には、刑事のカールとアサドが協力して事件に立ち向かうというバディものの要素があります。もっぱら動き回るのはカールの方で、アサドは地味に色んなことを成し遂げているという印象です。『キジ殺し』に至っては、ほとんどカールの話でしたけどね。
一人が暴走して、一人がそれをなだめるというバディの構図は、『リーサル・ウェポン』のリッグスとマータフのタイプ。派手なアクションはないですが。
しかし、『檻の中の女』はシリーズ一作目にも関わらず、この二人の背景については、さほど触れられません。『キジ殺し』に関しても、ほとんど皆無だったので、これ以上二人の背景がわかることはないのかもしれません。あって欲しいんだけどなあ。
とりあえずわかっているのは、カールが奥さんと別居していること。息子は、奥さんの家に住んでいるということだけ。アサドに関しては、毎朝同じ店で朝食をとっているということしかわからない。妻帯者かどうかも、不明。謎多き人物です。
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4.ファイル#1(ネタバレ)
トリック自体に関しては、特段言うほどのことはないです。ドラマでもざらにありそうなものなので、別に良いかなというぐらいです。
この監禁の方法がは独特です。一年に1バール(1バール=10⁵㎩、約1気圧)ずつ上げていくというのです。でも、一年にに1バールすつ上げるだけなら、適応するので何とかなるんですよ。怖ろしいのは、急に1気圧に戻されたとき。気圧の低下が激しければ、極端な場合は、深海生物が揚げられたときみたいに、内臓が口から飛び出したりします。さすがに5気圧ぐらいではそんなことにはなりませんが、死には至るでしょう。
一見理解不能な犯人の行動ですが、犯人の思考に沿って考えることもできなくはないです。彼は、交通事故のときに見た女の子に復讐のようなことをしてやりたいと思っていたのでしょう。ならば、自分と同じ目に遭わせてやろうと考える可能性は十分あります。
彼は、事故の後、孤児院に実質的に閉じこめられていたので、ここから監禁という発想に至ります。そして、気圧を上げたのは、彼は事故の後遺症で耳鳴りの症状を抱えることになったからではないでしょうか。
交通事故で耳鳴りになるという症状は、少なくありません。おそらく、彼もその一人で、事故の後の幼い頃から常に耳鳴りに悩まされることになったのでしょう。だから、彼は彼女にも同じ目に遭わせるために、わざわざ気圧を上げるという手間をかけて監禁をしたのです。
5.まとめ
『特捜部Q 檻の中の女』は、北欧ミステリーのビギナーには最適です。というのも、まずは謎がそれほど複雑ではないこと。そして、映像がまだそれほどエグくないこと(多少はあります、本当に痛々しいところとかベッドシーンとか)。また、バディものの要素もあり、キャラクターが魅力的です。
ただ、個人的には『キジ殺し』の方が好き。カールの苦悩や犯人像などが、今作よりも深く掘り下げられています。『檻の中の女』が気に入った人はもちろん、ちょっと物足りなかったなという人にも、ぜひ観てほしいです。
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