映画の並木道

古今の映画や海外ドラマについて紹介しています。ネタバレは基本的になく、ネタバレするときは事前にその旨を記しています。

映画『CUBE』~緊迫の90分~

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 『CUBE』(1997年)を見ました。ストーリーはシンプルなのですが、結構ハラハラする展開でした。ただ、それ以上に私が気に入ったのは、かなり理系心をくすぐられる謎です。私には理系オタクな面があるために、こういう要素があると喜んでしまいます。

 

 そんな数学的な面も解説したいのですが、あまりにも長くなってしまったため、次の記事にします。本記事では、まず本作のスリリングな面白さに注目したいと思います。そう、本作は数学に関する知識がなくても、十分スリリングな展開を楽しむことができます。

 

 

1.あらすじ

 ある日突然、数人の男女が立方体の部屋に閉じこめられる。彼らは無数に並んでいると思われる部屋を伝って、外に脱出しようとするが、中には死の罠が仕掛けられているものもある。彼らは果たしてこのCUBEから脱出することはできるのか?!

 

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 ストーリーはいたってシンプルで、最近では見慣れた感もある。いわゆるシチュエーションスリラーというジャンルになる。だが、1997年という時代を考えると、このストーリーは目新しかった。今のようにシチュエーションスリラーがたくさん作られているのは、『ソウ』(2004年)からだと考えられる。つまり、『CUBE』はこのタイプの映画のはしりだと言える。そして、このジャンルでは最高傑作だ。

 

2.緊迫の展開

 本作はかなり低予算で作られているというのが見ていて分かります。出てくる場面はどこもほとんど同じで、キャストも数人しかいません。でも、かなりハラハラさせられるのです。その原因は、数々の死の罠だけではない。というか、後半になると、彼らも上手く罠をかわしていくので、罠自体があまり出てこなくなる。

 

 何がスリリングかと言うと、どんどんおかしくなっていってしまう人々です。訳も分からず、誰かも知らない人々と閉じこめられ、しかも死の罠に囲まれているなどと言われたら、そりゃおかしくなります。そこをちゃんと見せているので、何となく気持ちが分かります。

 

3.箱の正体なんかどうでもいい

 私が本作の展開で1番上手いと思ったのは、CUBEを作製した人が最後まで分からない点です。一応それらしい説明もしていますが、吉本興業の社長と同じで(言っちゃだめなやつ笑)今一つ要領を得ない。要は、何の説明もなされていないのだ。彼らがなぜCUBEに入れられたのかもわからずじまい。このことを快く思わない人もいるようですが、私は上手いなと思いました。

 

 というのも、CUBEの作成者を明かしたら、観客の注目は完全にそっちにいってしまいます。相手が誰か分かれば何となく倒せそうな気さえしてしまいます。本作ではそんな野暮なことはしていません。そのことで、得体のしれないCUBE自体が恐ろしいものとして終始場面に出ていることになります。そして、恐怖の対象は徐々に閉じこめられた人々自身に移っていくのです。

 

 同様に最後まで正体不明の映画に『トレマーズ』(1990年)などがありますね。謎の怪物が出てくるのですが、結局これは誰かが作ったものなのか、あるいは地球外生命体なのかは分からない。無理やり変な説明を付けるぐらいなら、正体なんて言わなければ良いんです。私は支持しますよ。

 

4.まとめ

  本作はとにかくそのスリリングな展開が見せ場となります。私はこういったシチュエーションスリラーはあまりにも非現実的でナンセンスだとは思うのですが、それでも見ている間は手に汗握って楽しめました。それは、ただ不条理な罠に閉じこめられているだけではなく、その中で各々の特性を持った人々が必死に脱出しようとする姿が描かれているからでしょう。

 

 次の記事で『CUBE』の数学的な解説もしているので、ぜひ読んでみてください。

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