Amazonオリジナルドラマ『ザ・ボーイズ』をイッキ見しました。腐敗しきったスーパーヒーローの話なのですが、なんと挑発的な物語!
1.あらすじ
電気屋で働く青年ヒューイは、魅力的な恋人ロビンと付き合っていたろ。しかし、ロビンはある日、高速で走ることを特技とするスーパーヒーローのAトレインに衝突されて死亡する。まったく反省の色を見せないAトレインに憤ったヒューイは、謎の協力者ビリーとともにスーパーヒーローたちへの復讐を誓う。
2.設定が挑発的
今の映画界って、アメコミヒーローが席巻していますよね。『アベンジャーズ/エンドゲーム』の大ヒットは記憶に新しいところです。
そんな現状を痛烈に挑発しているのが本作。なにしろ、ヒーローたちは会社に所属していて、すべての行動は会社の指示で行われているというのですから。そして、このヒーローたちは悪党を倒すことよりも、自分が有名になることや、会社の利益が増えることを望んでいます。性格もクソ野郎ばかりです。
また、ヒーローたちが既存のヒーローに似ているのは、完全に挑発行為です。例えば、速く走るAトレインは、完全にフラッシュ(ドラマ『THE FLASH/フラッシュ』)。目からビームを出すのはキャプテン・マーベルの特技だし、クイーン・メイブはワンダーウーマンにしか見えない。ホームランダーのいでたちはキャプテン・アメリカ風で、ディープはアクアマン。加えて、彼らのチームであるセブンの本部は、完全にスタークタワーです(『アベンジャーズ』等に登場)。
What’s the difference between a superhero and a supervillain? Branding. #TheBoysTV pic.twitter.com/ZVHVt3kbHK
— The Boys (@TheBoysTV) October 12, 2018
つまり、これは皆が知ってるヒーローたちがクソ野郎だったらどうなる?という話なのです。ヒーローだって所詮は人間ですから、こういったことにならないとも限りませんよね。これを見ると、現実にスーパーヒーローがいなくて良かったなと思います。
3.ガッツのあるボーイズ
↑原作のアメコミ。画像は日本語版です。
この腐りきったヒーローたちに立ち向かうのが、ヒューイやビリーたち「ザ・ボーイズ」のチームです。まず、ヒューイの境遇がかわいそうすぎる。将来のことまで話し合っていた恋人が、目の前でヒーローにぶつかられてぐちゃぐちゃになるんですよ。しかも、ヒーローは人助けとかをするためでなく、ただ急いで走っていただけ。もう、Aトレインが憎くてたまらないです。
そして、ヒューイは最初こそヒーローたちをぶっ潰すのに闇の世界に入るのにそれほど乗り気ではなかったのですが、徐々に入るの慣れていきます。父親から子ども扱いをされていたヒューイが、だんだんとガッツのある人間になっていくのは見どころの一つ。
謎の男ビリーですが、彼が何のためにヒーローたちをぶっ潰そうとしているかはシーズンの終盤で明らかになります。こちらの話もなかなかひどい。ホームランダーも相当なクソ野郎だなと思わされます。
4.一筋の光スターライト
ヒーローたちはほとんどがクソ野郎なのですが、新規加入したスターライトだけはまだまともです。正義を貫くために意気揚々とスーパーヒーローチームのセブンに参加しましたが、現実は理想とはかけ離れていたことを知ります。仕事はPR活動が主で、悪党退治も自分の思う通りにはできない。仲間の下劣さにもやられ、うんざりしています。そこで、唯一まともに見えたヒューイと付き合い始めることになります。しかし、彼らは敵同士なので、色々あるってわけ。
余談ですが、スターライトは会社から新しい衣装を提案されるのですが、これがセクシーではなく普通にダサい。滑稽ですらあります。何百人ものヒーローを抱える会社のなのに、衣装のプロデュース力は低いのか?
5.ユーモアとバイオレンス
本作にコメディ要素は薄いのですが、ビリーがなぜかスパイスガールズのたとえとかを出してくるところとかは面白い。さっきのスターライトの衣装も、ネタと見れば面白いです。あと、ディープが助けようとした海洋生物が片っ端から死んでいくのも、ブラックユーモアが効いてます。
本作は一応R18指定なので、バイオレンス描写は強烈です。ヒーローが相手を倒すときとかは、結構グロイです。マーベル映画とかでは、絶対にそんな感じにはしないでしょう。なぜこんなにグロくしてR18にしてしまったかというと、私が思うに子供の夢を守るためなのかなとも思います。さすがに、ヒーローたちが実はクソ野郎だったという話を子供たちに見せたいとはあまり思いませんからね。だから、あえてバイオレンス強めにしたというのが私の考えです。
6.まとめ
闇のヒーロー物語『ザ・ボーイズ』ですが、いかがでしょうか。アメコミヒーロー好きにも楽しんでいただけると思いますが、現状のヒーローが流行りすぎている状況をちょっと冷めた目で見ている人にはまさにぴったり。刺激強めの本作、幻想が打ち砕かれる準備はできているか!