映画の並木道

古今の映画や海外ドラマについて紹介しています。ネタバレは基本的になく、ネタバレするときは事前にその旨を記しています。

映画『ソーシャル・ネットワーク』~成功するには嫌な奴にもならなければ~

The Social Network - pix 13

  『ソーシャル・ネットワーク』(2010年)で描かれているマーク・ザッカーバーグは、結構嫌な奴という感じがしました。それでも、Facebookを作ったというのは、偉業なのだろう。

 

 

1.あらすじ 

 ハーバードに通う19歳の大学生マーク・ザッカーバーグは、恋人に振られた腹いせに、大学中の女子をランク付けするサイトを作る。瞬く間にこのサイトは炎上したが、中にはこの技術に注目し、新たなSNSを作ろうと考えた者もいた。やがて、マークは世界最大のSNSとなるFacebookの開発を進めていくことになる。

 

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 監督は奇才デヴィット・フィンチャー。『セブン』(1995年)、『ファイト・クラブ』(1999年)など、暗い雰囲気の作品が多いですが、いずれもストーリーがよく練られています。

 

 主演のジェシー・アイゼンバーグはオタク男子役がお似合いの俳優。本作以外は、コメディ風の作品が多め。マークの友人であるエドゥアルド役は、アンドリュー・ガーフィールド。『アメイジングスパイダーマン』シリーズの主役で知られますが、『ハクソー・リッジ』(2016年)ではアカデミー賞にもノミネートされていて、演技派としても注目されています。

 

2.オタクの躍進

 この映画で描かれるマークは、完全にオタク。より的確に今の言葉でいうなら、陰キャです。なぜか最初は彼女がいたのですが、陰キャらしく早口で訳の分からないことを言って破局。それから、女子をランク付けするサイトを一晩で作り上げるなど、闇が深い。

 

 しかし、その技術力は確かだ。そもそも、数時間で何百人もの人を比較・集計するサイトを作る技術がすごい。そして言うまでもなく、Facebookという巨大SNSを開発したというのは、恐ろしいくらいの偉業だ。

 

 彼が凄いのは、その技術力だけでなく、人々のニーズを反映したサービスづくりにもある。大学中の女子をランク付けするというのは、ゲスな試みではあるが、少なからぬ男子はそれを歓迎したわけだ。そしてFacebookは、人と人のつながりをインターネットに移すだけでなく、それ以上の情報を人々と共有することができたために、これほど爆発的な人気を得た。その典型例が、「交際ステータス」欄だろう。あまり親しくない人に彼氏・彼女がいるかどうかなど知ることができない場合が多いのだが、確かに知りたい情報かもしれない。マークは、こういったニーズがあることを把握し、それをサービスに組み込んだという点でビジネスマンとしても画期的だったのではないでしょうか。

 

3.でも、嫌な奴(ネタバレ)

 それでも、マークは社会的には問題がある人なのかもしれない。どうやら、彼はウィンクルボス兄弟の「ハーバード・コネクション」のアイデアを盗んだような節がある。というか、アイデアの発端は確実にここから得たのだろう。ならば、ウィンクルボス兄弟と開発を進めるのが筋ではある。しかし、彼らが名門クラブに所属して自分はそうではないことの腹いせなのか、そうはしない。

 

 要は、完全にこじらせてしまっている。自分は名門大学にいるというエゴと、それでも名門クラブには入れていないという劣等感で。だから、凄いことをして皆を見返してやろうという気持ちがあるのだろう。もちろん、クラブの奴らなどとは協力などしないで。

 

 かといって、彼が必ずしも嫌な奴というわけではない。ときには、ビジネスとしてどうしても「嫌な奴」としてふるまわなければいけない時がある。ドラマ『シリコンバレー』シーズン1では、アーリックが「成功するには、嫌な奴にならなけらばいけないんだ」と言っていた。より高みを目指すためには、何らかの犠牲が必要なこともある。

 

 マークのエドゥアルドに対する態度などはまさにそうだろう。エドゥアルドだけが名門クラブへ入ったことに対する嫉妬の気持ちもあったのだろう。しかしそれよりも、ビジネス上そうせざるを得なかったという面の方が強いのかもしれない。エドゥアルドは、Facebookの立ち上げ段階での費用を出してくれたわけで、そういった恩は非常に大きい。しかし、しっかりとしたスポンサーも付き、会社自体も大きくなっていくと、会社での役割に対してエドゥアルドの取り分が多すぎるような感じがしなくもない。そこで、マークはやむなくエドゥアルドを切ったということも考えられる。

 

4.まとめ

 本作は、事実と違う部分も多いとは言われていますが、映画としては非常によく出来ていて面白かったです。一人の地味な学生が、世界を変えることになるものを作るまでの話が丁寧に描かれています。マーク・ザッカーバーグに対しては、共感しにくい部分も多いかもしれませんが、それが必ずしも彼の本心ではないのかもしれないということ。そういったことをいろいろと考えていました。

 

 本作の大きな見どころを最後にもう一つ挙げておくなら、若手俳優たちの演技合戦にあります。特にマーク・ザッカーバーグ役のジェシー・アイゼンバーグエドゥアルド役のアンドリュー・ガーフィールドの演技は見事。IT業界の荒波に巻き込まれていく若者を演じきっています。

 

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