映画の並木道

古今の映画や海外ドラマについて紹介しています。ネタバレは基本的になく、ネタバレするときは事前にその旨を記しています。

映画『フライング・ジャット』~ヒーロー映画の定石を押さえた快作~

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インディアン・ムービー・ウィーク2019HP https://imwjapan2019.com/より

 今、全国の映画館でインディアン・ムービー・ウィークという企画をやっているらしく、そこで上映されていたインド映画『フライング・ジャット』を観てきました。日本ではDVDにもなっていないようなこういう映画も上映してくれるので、こういう企画はどんどんやってくれると嬉しいですね。

 

 

あらすじ

 武術教師のアマンは、神木の魔力により、スーパーヒーローになってしまう。最初は、ヒーローとして活動することに億劫だったが、やがて人々に慕われる正義のヒーローとして活動し始める。一方で、神木を倒そうとするマルホートラは、暗殺者のラカを使って、フライング・ジャットを倒そうとする。

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↑何言ってるかわからないけど、雰囲気だけ見て(笑)

 

ビシッと押さえられた定石

 『フライング・ジャット』は、昨今流行りのスーパーヒーロー映画です。近年のヒーロー映画の潮流として、「正義とは何か」ということをヒーロー自身が悩みがちなところがあるのですが、『フライング・ジャット』はそんなことでうじうじしていません。全体的なプロットとしては、元祖『スーパーマン』に近く、コメディ強めなところは『シャザム!』に近い感じです。

 

 特に、『スーパーマン』からの影響は濃厚。まずは、ヒロイン。これはどう考えてもロイス・レインでしょ。スーパーヒーローに惚れちゃう一方で、身近な人(実際はスーパーヒーローの中の人)も好きなところとか。フライング・ジャットが、ヒロインのキルティをベランダから空に一緒に飛んでいくところは、完全に『スーパーマン』オマージュでした。

 

 敵が、巨大企業の社長というのもそう。『フライング・ジャット』の敵は、化学薬品工場の社長マルホートラです。一方、『スーパーマン』の敵は、レックス・コープの社長である大富豪のレックス・ルーサーでした。

 

 ヴィラン(悪役)のラカも、かなりアメコミ的。よくわからない有毒な液体を全身に浴びても、なぜかまだ生きている悪役といったら、『バットマン』のジョーカーや『バットマン&ロビン Mr.フリーズの逆襲』などがパッと思いつくところです。ゴリゴリの容姿は、『ダークナイト ライジング』のベインが近いかな。(ちなみに、ベインを演じたトム・ハーディと、ラカを演じたネイサン・ジョーンズは『マッドマックス 怒りのデス・ロード』で共演)

+インドのスパイス

 そんなアメコミ的な設定に、インド映画的な要素がしっかりミックスされています。顕著なのは、ダンスシーン。近年のインド映画には、ダンスシーンが少なくなってきている傾向があるのですが、『フライング・ジャット』ではしっかり踊っています。1曲目は皆でわいわい、2曲目はカップルでというのも定番。3曲目は、かなり強引に入れた印象がありましたけどね。

 

 コメディ要素もそんなインド的なところの一つ。フライング・ジャットは、空が飛べるのに、高所恐怖症だからずっと低空飛行というのは、面白かった。アマンの兄がちやほやされたくて、フライング・ジャットの恰好をしたところ、ひどい目に遭ってしまうところも良かったなあ。

頑張れ、インド!

 全体的に、笑いも多く、自分は楽しめました。でも、難点もなくはない。特に、終盤。一気にもやもやしてきちゃうんだよなあ。環境問題に結び付けたいのもわからなくはないが、そのせいで展開がぼやけている印象があります。アマンの兄が勇敢になったところは感動的だったので、こっちの話だけにフォーカスしても良かったかな。最後に、宇宙にまで飛び出すという展開は、もはやバカバカしすぎて許す(笑)

 

 そして、これはインドのアクション映画全体に言えるんだけど、編集が下手。ヒーローや悪役の登場シーンをスローモーションにして、煽りまくる編集は、インド映画の味だと思うから、それはそれで良い。でも、雑魚キャラの車が来たときもスローモーションにしたでしょ。そこはいらない。上手く使ってほしいな。インド映画は、すでに役者も脚本も音楽も良いので、あとは映像、特に編集技術をレベルアップしてくれれば、文句なし。頑張れ!

 

総括

 自分はこの『フライング・ジャット』は、結構楽しめました。とにかくたくさん笑わせてくれたし、アマンの兄の話も良かった。純粋に正義のために戦うという古き良きスーパーヒーロー像を再確認させてくれた作品でもありました。