映画の並木道

古今の映画や海外ドラマについて紹介しています。ネタバレは基本的になく、ネタバレするときは事前にその旨を記しています。

映画『メメント』~時間が逆さま~

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 『メメント』(2000年)は最初がラストで、最後が始まりです。話が逆向きに進んでいきます。かといって、撮影したものを逆再生するわけではありません(それではさすがに映画として成立しません)。話が細切れになっていて、それを逆向きに並べた感じです。下手をすればストーリーが崩壊しかねないこの形式ですが、本作は見事に面白い展開を見せてくれます。

 

 

1.あらすじ

 ある日、主人公レナードの妻は何者かにより殺害される。レナードもそのとき現場にいたが、そのときの外傷によりそれ以降の記憶が10分しか持たなくなってしまった。犯人捜しを始めたレナードは、記憶が続かないことの代わりとして何事もメモをとる習慣をつける。それでも真相は中々掴めず、……。

 

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 いまいちな予告編だけど、一応貼っておきます。

 

 監督はクリストファー・ノーラン。私はこの監督大好き。『インセプション』(2010年)、『ダークナイト』(2008年)、『インターステラー』(2014年)など、私はどれも傑作だと思います。練りに練られたプロットと重厚感のある映像が好きです。

 

2.見事な展開

 本作の肝はストーリーが逆展開するという点でしょうが、これが非常に上手い。ただ単に逆展開してみたというのではなく、ちゃんと逆展開ならではの面白さが出ています。それこそ、観客は10分ごとにどんでん返しをくらわされるので、すごい。これは逆展開という形式でなければ実現できなかったことだろう。

 

 ただ、この形式を取ったがゆえに、ややストーリーが分かりづらいという状況が起きています。私はそこまで困りませんでしたが、人によってはストーリーを理解するのに難儀する場合があるようです。理由は結構記憶力が必要になるからかもしれない。逆展開なので、観客は物事の結果を先に知り、原因を後に知ることになる。つまり、観客はその後に何が起きるかは覚えていないと、ストーリーがわからなくなる。そこだけは見る前に気を付けておいた方が良いかも。ま、わからなくなったら、また見ればいいだけの話ですが。

 

3.悲しい主人公

 主人公は10分しか記憶が続かないという病気を持っている。ただ、これはあくまでも短期記憶がそれ以上長い記憶に変換できないということらしく、傷を負う以前の記憶は長期記憶なので覚えています。私は脳科学に詳しくないのでよく分かりませんが、記憶のプロセスとしては正しい気がします。

 

 主人公は徐々に誰も信じることができなくなっていきます。それもそのはず。誰にあっても初めましてなのだから、信用できるはずもない。そこで、彼はメモを駆使することで生きている。人の写真にメモをしておくことで、その人のことを分かるようにしてある。事件解決に特に重要な情報については体に刺青して残す。このメモだけが彼にとって唯一信用できるものとなる。

 

 悪い人もいるもので、このレナードを自分のために利用しようという人が出てくるのです(この手口も実にうまい)。しかし、レナードはそのことを覚えていないので、その人のことをその後も信じたりしてしまうのです。何とかしてあげたい。

 

 ちなみに、どうでもいい話ですが、私は本作を見てからメモを残す習慣を付けました。次の日にしなければならないことを、必ず目に付くところに付箋で貼っておくと有効です。さすがに体にまでメモをしようとは思いませんが。そんな生活術も身につきました。

 

4.まとめ

 とにかく、本作は逆展開を成功させたという点で素晴らしい。そして、サスペンスとして面白い。どんでん返しもあるし、本当に満足感があります。ただ、頭を使うので見た後は疲れます。ぜひ気合を入れて見てみてください。見たことがあるという人もぜひもう一度。1回目では気づかなかった点に、たくさん気づけると思います。