『アバウト・タイム~愛おしい時間について~』(2014年)は、優しい物語です。見終わったら、優しい気分になれます。ごだごたした映画や現実に飽きたら、1回見てみると良いですよ。
1.あらすじ
イギリスのコーンウォールに住む青年ティムは、いつまで経っても恋人ができないでいた。そんなティムは、21歳の誕生日に父親からタイムトラベルの能力があることを告げられる。イギリスに移り住み、弁護士として働き始めたティムは魅力的な女性メアリーと出会う。しかし、タイムトラベルにより、出会いはなかったことに。それでも、なんとかメアリーの愛を勝ち取り、タイムトラベルを使って順風満帆の生活を送り始める。やがて、本当の幸せとは何なのかに気づく。
監督のリチャード・カーティスは主にロマコメ(ロマンティック・コメディ)を得意とする監督・脚本家です。他の監督作には『ラブ・アクチュアリー』(2003年)、脚本には『Mr.ビーン』(1989年~)『ノッティングヒルの恋人』(1999年)『ブリジット・ジョーンズの日記』(2001年)などがあります。
2.優しい話
本作はあまり大きな事件が起きることなく展開していきます。というか、事件が起きても、タイムトラベルが使えるのでそれほど苦労せずに解決してしまいます。それだけに日常が色濃く見えてくるわけです。
とにかく、本作は優しさを感じます。恋人に対する愛や家族愛といったものが嫌味なく描かれているので、自然とこっちも優しい気持ちになれます。誰かを愛するってこんなに良いことなんですね。良いなあ。
この映画が伝えたいこともかなりストレートに分かるので、その点も良い。一日一日を大切に生きていこうといった感じ。それを身に染みて感じる。
3.タイムトラベルの話
本作においてタイムトラベルはあくまでも、主人公のティムが幸福な人生に気づくための道具でしかありません。だから、本作をSF視点で見るのは、見当違いでしょう。しかし、理系オタクの私からすると、どうしても見逃せない点があったので書かせてもらいます。だからといって、本作の価値が下がるわけでは全くないことをあらかじめ言っておきます。
本作のタイムトラベルにおける最大の矛盾点は、未来にはいけないと言っているのに、未来にも行っているというところです。一見すると、未来には行っていないように見えます。しかし、主人公が過去に行ってから、また現在に戻ってくることが何度かあります。この「過去から現在へ」は完全に未来へのタイムトラベルに当たります。
ちなみに現代の科学理論では、未来へは行けるだろうが、過去には行けないだろうという考えが主流です。この場合、タイムトラベルをしたかったら、未来へ行きっぱなしで、現在には戻って来られません。
4.殺伐とした世界に捧ぐ
本作は愛にあふれています。何となく殺伐とした世界、娯楽映画でさえシリアス路線が多い昨今の映画。そんな中で、こういう映画は珍しいかも。心のビタミンというか、見ていると癒されます。心が疲れたときに見たい1作です。